第5話 贅沢な夕食

 僕は完成したスープとパンをテーブルの上に並べていく。いつものチーズと麦粥より少し贅沢な夕食になった。

 スープを一口掬って飲んでみると、程よい塩味と野菜の甘みが口の中に広がった。野菜にはスープの旨味が染みていて、ゴロッとしたベーコンも噛むたびに肉汁と脂身の甘さが溢れてくる。


「美味しい……」


「ベーコン入れて正解だったな!」


 スープの美味しさに感動する僕を見て、ケインは口いっぱいにスープとパンを頬張りながら楽しそうに笑っていた。それがなんだか恥ずかしくて、僕はケインにちょっかいをかける。


「ケイン、もうちょっと落ち着いて食べなよ」


「そうか?スフェンの食べ方が上品なだけだろ」


 ケインはそう言うと、不思議そうに僕の顔を覗いてきた。


「スフェンはその歳にしては落ち着いてるし、綺麗な緑の目をしてるしな。もしかして貴族の庶子とか?」


「なんで、そこで僕の目の色が出てくるの?」


 食べ方の話からいきなり自分の外見に話が向き、僕はびっくりする。確かに黒髪黒目のケインと比べて僕の見た目はカラフルだけど。


「スフェン知らないのか?お前みたいな鮮やかな髪とか目をしてる奴は、貴族やその親族に多いんだ。」


「ええっそうなの?知らなかった」


 確かに、前世の記憶を思い出したばかりの頃は変わった色の目だなと思っていたけど、今世の両親も同じ色の目をしていたから普通のことだと思っていた。

 スープを啜りながらケインは話を続ける。


「まあ、こんな辺鄙な村に庶子を住まわせる物好きな貴族はいないだろうし、たまたまだろうさ。賊の奴らに目を見られてなくて良かったな、見られてたら攫われてたぞ。」


「そうだよね。亡くなった両親も外見については何も言ってなかったし、賊に関しては本当に運が良かったよ」


 あの時、目を覚ますのが少しでも早かったら僕はどうなっていたんだろうか。そう考えると僕は怖くなり、気持ちを誤魔化すためにパンを齧った。


「一度襲った村には数年は近づかないって言うし、そんなに心配するなよ」


「うん」


 その慰めの言葉に僕が小さな声で返事をすると、「そういう所はまだ子供だな」と言って、ケインは自分のスープからベーコンを一つ掬うと、俯いてパンを齧る僕にくれた。


 その後、食事を終えた僕たちは食器の片付けを終わらせた後、すぐに寝ることにした。

 僕は、ケインに寒かったら三階の箪笥にしまってある毛布を使うように伝え、二階の自室で眠った。

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