第53話 コボルト

「ガシンッ」


 


 バルガスの重い木斧の一撃を木刀で受けたコボルトは、木刀を引くと同時に自分の重身をずらした。それだけでバルガスは前のめりになり、隙きが生まれる。


 コボルトの手加減した一撃がバルガスの頭を襲った。




「コツン」


「参った、俺の負けだ」


 


 バルガスは降参した。




「次は僕の番ですね」


 


 真剣な顔つきでマシュー君が言った。


 


 マシュー君は身体能力の向上をしてからはバルガスを抜き、その強さはキルギス村トップランカーだ。


 ヘンリーなど、すでにマシュー君はAランクの腕前だと太鼓判をおしている。


 さて、この闘いどうなるか。




 初手はやはりマシュー君だった。もの凄いスピードでコボルトの持つ木刀の間合いを詰め、コボルトの首めがけて木刀を打ち込んだ。コボルトはそれを右に避けると、木刀をマシュー君に振り落とした。




「カシンッ」


 


 マシュー君はもう片方の木刀でそれを受けた。マシュー君の必殺技、ニ短剣流マシューオブマシューである。


 マシュー君の空いてる方の木刀がコボルトの首めがけて刺突をかます。




「ぬんっ」


 


 コボルトはそれを間一髪避けるとマシュー君に強烈なタックルを仕掛けた。マシュー君はそれを避けようと飛び退く。


 それを狙っていたかのようにコボルトの木刀がマシュー君の腿を打ち据えた。




「バシンッ」




「参りました、僕の負けです」




 マシュー君は敗北をきした。




 ことの経緯は道標に設置した強者募集の看板を見たコボルトが村を訪れたことから始まる。


 その可愛らしいモフモフ犬系獣人の風体から当初は強さを危ぶまれたが蓋を開けたらこの結果。




 コボルトは強かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る