第33話 登場 自浄なる滝の守護者

 俺とマシュー君はバルガスに案内され山の中腹にある滝に到着した。


 


 滝は高さ5m位、幅1m位の小ぢんまりしたものだったが、その様はどこか神秘的であり厳かな雰囲気を醸し出していた。流れる水は澄みきっている。飲んだらとても美味しそうだ。




 「おい、レン、ここに祠あるぞ。大分、傷んでるがな」


 


 滝に見とれていた俺にバルガスが言った。


 確かに祠はあった。木で造られたボロボロの祠が。




 俺が祠にさらに近づこうと歩き出した瞬間、滝壺から女性と思わしき大きな声が聞こえてきた。




「なんじゃーなんじゃーお前は。お前、潮辛い者の眷属じゃろう。こんなところまで何用か? まさかこんな辺鄙なところまでワシを殺しに来たか? 」


 


 滝壺から2mくらいの水球が浮かび上がる。水球は段々、人の形を取り始め、最終的に全身水色の美しい女性へと姿を変えた。




「すいません、お前ってもしかして俺のことですか? 」


 


 俺はこの事態についていけず、ただそう聞くしかなかった。




「当たり前じゃろ、このうつけ者。お前自覚あるじゃろ、自分が潮辛いと。ワシのことバカにしとるのか」


 


 美しい女性は勢いよく俺を罵った。


 


 俺は考えた。潮辛い者の眷属と言われるとそれはもう海苔の精霊しか思い浮かばない。この水の女性は海苔の精霊と仲悪いのか。それなら納得いくが。




「潮辛いって、海苔の精霊のことですか? 」


 


 俺は訊ねた。




「はて、海苔の精霊? お前、嘘つかれとるわ。お前の主はそんなちっぽけな存在ではないわ。たわけが。ワシが潮辛い者にどんだけ潮辛さを味わされたか。どれだけワシの眷属が命落としたか。思い出すだけで苦痛じゃ、帰れ、ここから今すぐ去れ、そうでなければワシはお前を殺さねばならん」


 


 水の女性は凄みを見せながら言った。


 その言葉に俺はぞくりとした。こいつは多分、俺より強い。ここは素直に帰ろう。


 


 その時、辺りに中性的な優しい声が響いた。




「待って下さい、自浄なる滝の守護者よ」

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