エピローグ
——六か月後
「おーい、かきさわぁ、こっちだこっち!! 」
「すいません。遅れてしまって。もう始まってますか? 」
「ギリギリだ! おっ、こっちが例の彼氏さんか! 俺は宮野。前に会ったことあるかな? 」
「あ、その節はどうも、水谷哲夫です」
「ああ、もう二人とも! 早く行かないと始まっちゃう! 行きましょう! 」
今日は宮野さんの娘・優佳ちゃんのピアノコンクールだ。
数日前に優佳ちゃんから電話があった。
私たち二人の為に練習したと言うのだ。
もう絶対に聞きに行くしかない!
ピアノの事はよくわからないけど、他の子たちなんか目じゃない。
演奏が始まると哲夫さんは私の左手をそっと握ってくれた。
薬指の指輪と共に。
哲夫さんは名古屋にある弁護士事務所に就職したのだが、憧れの叔父さんに『好きな人を残してきた』と言ったら『そういう事情は早く言え!! 』とひどく怒られたという。
4月からは東京の仮事務所で働いている。
今は新事務所の開店準備に大忙しだ。
「優佳ちゃん、すごく良かったよ。お姉ちゃん感動して涙が出ちゃった。ありがとう」
「うん。お姉ちゃん、ありがとう。今度はもっと頑張って、優佳、優勝目指すね! 」
入賞はできなかったけど、その演奏は私たちにとってどの演奏よりも素晴らしいものだった。
「じゃ、僕はこのまま仕事に戻るから」
「はい。行ってらっしゃい、ダーリン♪ 」
哲夫さんったら赤くなっちゃってかわいい。
~♪~♪~
「はい。萌恵ちゃん、どうしたの? 」
「あの、急なんですが、相談があるんです」
柿沢自動車2F、ダイビングサークル『アクチーニャ』事務所(元・哲夫の部屋)で萌恵ちゃんとお友達の美穂さんという女性と会った。
「今度の3連休って桃さん大丈夫ですか? 」
「う~ん。ちょっと急だね。急いでるのかな? 」
「あ、あの! 私、ダイビング免許をどうしてもGWまでに取りたいんです」
「美穂さん、どこかに旅行へ行く予定でもあるの? 」
「私.. 私、自分の目で沖縄の.. 沖縄の海を見たいんです! 」
—ガタンッ!
「わかった! そういうことなら私に任せてっ!! 」
太郎丸の小屋の上、春のそよ風にマーガレットの花が揺れていた。
『ももは今日も潜伏中②~不屈のダイビング女子~完』
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