異国の地~ボホール編
フィリピン・マニラ行きの搭乗アナウンスが入る。
◇LINE
『七海、行ってくる! 太郎丸をよろしく! 』
『おー! 楽しんでくるんだよー!! おみやげ忘れるなっ! 』
◇
人生初の海外へ出発します!
飛行機の中では明里さんと隣だ。
私は一番廊下側の席。
萌恵ちゃんと竹内君は1列挟んで斜め後ろの席になっている。
飛行機が安定するとそれぞれが眠ったり、本を読んだり..
私は緊急ベストの場所を確認したり、廊下側から窓を見たり.. と思ったら窓を閉められた。
「あ、あの.. 明里さん.. 」
「ん? なぁに? 」
「今、日本は朝じゃないですか.. 海外って夜とかだったり.. 」
「?? 桃ちゃん、海外は初めてなの? 」
「はい ..ちょっと緊張してます」
明里さんはクスっと笑うと『私がいるから安心して』と.. よ、余裕!
なんて頼もしいんだろう!一生ついていきます!!
後ろの席を見ると背筋をピンとしている竹内君が見えた。
「竹内君より明里さんのほうが頼もしいなぁ.. 」
「ダメよ、桃ちゃん。そんなこと言ったら男は自尊心がすぐに傷つくんだから」
・・・・・・
・・
—約4時間のフライト。
窓から陸地が見えてきた。
海岸線から緑色の敷地に家が建ち並んでいる。
これは日本ではない国の土地なんだ。
「本当に海外ってあるんですね」
私は誰にとではなくひとりでつぶやいていた。
さらに陸が近づき建物の様相がはっきりわかってくると、ますます異国に来たのだと実感がわいた。
まるで自分が異世界に召喚されたのではないかとさえ思えてしまう。
マニラ空港に自分の足で降り立つ。
肌の色、言葉が違う人々が織りなす世界。
この空港だって壁・床・天井など全てがこの国の人々が建てた建物なのだ。
入国手続きにいたってはまさしく今、私が外国人であることを自覚させるイベントだった。
私は明里さんに3cm空けずにぴったりとくっつく。
「あ、あのね、そんなにくっついたらうまく歩けないよ? 」
「私は大丈夫です。そ、それより明里さん、入国するとき呼び止められたり、別室に入れられたらどうしたらいいんですか? 」
「あははは」
ただただ笑われるだけだった。
映画やアニメの世界では何か起こるのは必ず空港だ。
何かしらの事件に巻き込まれるのではないか、と心配になってしまう。
「ねぇ、ねぇ、萌恵ちゃん、外国だよ。ここ」
「桃さん、何度、同じこと言ってるんですか? 」
「ごめん。でも.. 」
「別にいいですけど、マニラは日本に比べると治安は良くないんです。おどおどしたり、きょろきょろして、隙を作らないほうがいいと思いますよ。負けてしまいますよ? 」
相変わらずオブラートが薄い言葉。
それにしても『負ける』とは..
萌恵ちゃん、何かと闘っているのかしら?
萌恵ちゃんからの忠告は続いた。
「そうだ、知らない人の親切にも気を付けてくださいね。『カバンを運んであげるよ』とか言われて任せちゃうと、そのまま持っていかれたり、お金を請求されるなんてこともあるそうです。特に桃さんは基本的にもの凄く平和な感じなので注意してくださいね」
「はい.. 気を付けます」
「はははは、大丈夫ですよ。そのための僕じゃないですか! 」
「ほら! 竹内君もパスポートをいつまでも手に持ってたらダメなんだってば!! 」
サッと投げた竹内君のボールは即座に萌恵ちゃんに打ち返された。
「萌恵ちゃん、もっとやさしくね。竹内君、いろいろ教えてあげるから近くにいてね」
明里さんがやさしく声をかけるとポーッと顔を赤らめながら「はい」という竹内君。
そのすねに萌恵ちゃんの蹴りが入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます