ブラッシュアップ
ダイブマスターコースは講習のアシスタントや運用のサポートなどを学ぶほかに、自分の
スキルをブラッシュアップしなければならない。
最終的には24ものスキルをインストラクターの前でデモンストレーションし、評価を受けるのだ。
これらのスキルはオープンウォーター講習の時に習ったものと同じスキルだ。
つまり生徒として習った基本のスキルを、教える側のレベルまで磨き上げなければならないのだろう。
私は詩織さんとともに土肥のダイビング施設101に訪れた。
「じゃ、まずはこの中からマスククリアを桃ちゃんなりに行ってごらん」
マスククリアは基本も基本、簡単なスキルだ!
水中に潜ると、マスクに水をいれて、すぐにサーっとクリアして見せた。
すると詩織さんは水中スレートにこのように書いた。
『私は生徒、もう1回手本を見せて』
『手本』.. もう1回やってみればいいのかな?
私はもう一度サッとスキルをやって見せ『OK』サインを送ってみた。
詩織さんは再びスレートに何かを書き始めた。
『生徒さん、よく見てて』
詩織さんがスキルをやり始める。
首を下にゆっくりと傾け、マスクの両端をつかみ、人差し指で2回ポンポンと上部をたたくとゆっくり水を入れる。
マスク内に半分くらい水が入った状態を見せると、今度はゆっくりと上を向きながら水を抜いていく。
クリアした状態のガラス面を指でなぞって見せるとOKサインを送ってきた。
****
「どう? 私と桃ちゃんのスキルはまったく同じスキルだったけど、違いがわかる? 」
「全然違いました.. 私のはやっただけでした」
「水中では言葉で伝えられない。だから大切なスキルポイントこそゆっくりと強調し、印象付ける。オーバーアクションにね」
「まるでパントマイムのパフォーマーですね」
「そう、それ! それ! 」
私はもう一度水中でマスククリアをやってみた。
下を向いて水をゆっくりと注いで、その状態をみせる。水を指さしてみる。
そして上を向きながらゆっく.. ゆっくり抜いていく.. ケホッ。
クリアした状態をみせて.. あれ.. まだ残ってる..
どうする.. この失敗をどうする。
私は首をかしげる。そして残った水を指さすと、もう1回のサインをだして、再び上を向きながら『残った水』を抜き切ってみせた。
そしてマスククリアした状態を見せて『OK』サインをだしてみた。
「あははは。桃ちゃん、失敗をうまく使ったね。実は私もたまに失敗するとそれをやることあるんだ。失敗を見せることで印象づけることもあるからね。さっきのは1回でクリアできなければ2回3回やってクリアする良い見本になるから『有り』だよね」
「詩織さん、失礼ですね! 失敗をうまく使ったんじゃなくて最初から狙ってやったんですよ」
私は5mプール内に張り巡らされた鏡に向かって、自分が生徒の気持ちで自分自身のスキルを見て研究した。
(バレリーナやダンサーが鏡を見ながら練習するのってきっとこういうことなんだな.. )
ところどころ自分自身でパフォーマンスを考えて付け加えたり、この練習はかなり楽しかった。
そしてそのパフォーマンスを詩織さんに見せてみた。
調子に乗って盛りすぎたパフォーマンスは当然削り取られたけど(^^;
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