露になった本心
お盆も終わり、本日はレスキューダイバーコースの2回目です!
芹沢さんの都合上、1回目から期間を開けての2回目となったのだが、考えて見ればテキストで復習したり、改めてトラブル回避の方法なども考えることが出来てよかったのかもしれない。
今回も場所は大瀬崎のビーチ。
個人的には海の中が明るい富戸ビーチが好きなのだけど、講習の内容を考えるとどこからでもEN/EXできる大瀬崎の利便性は大きい。
前回の「疲労ダイバー」と「パニックダイバー」では水面におけるレスキュー活動が主な講習内容だった。
今回は水中の行方不明のダイバーをサーチし、水中から意識がない事故者を引き上げ、曳行し、エキジットするのが主な講習内容となっている。
これらの内容は『伊豆の浜ダイバーパーク』で目撃した事故現場そのものであり、あの緊迫感を肌で感じ、本物のレスキュー活動を見たことは、私にとってプラスになった体験だと思っている。
◇◇◇◇◇◇
・水面で反応のないダイバーへのアプローチ
・人工呼吸をしながら曳行
・器材を外してエキジット
◇◇◇◇◇◇
午前の部で行う講習内容は前回の講習に準じるもので、私も芹沢さんも『次に何をすべきか』を考える余裕もでき、かなり速いペースで習得することが出来るものと思っていた。
だが、自分の練習を「伊豆の浜ダイバーパーク」での事故現場に当てはめると、改めてレスキュー活動での連携とスピーディに行う難しさを実感した。
スピードを意識しすぎ、わずかな乱雑さを見せた私に詩織さんは『ひとつひとつ的確に行うことこそが大切な事』とアドバイスする。
そして、意外にもスパルタ的に体力の続く限りの反復練習を行った。
時には詩織さんから檄が飛ぶような場面すらあった。
・・・・
・・
そして午後になると本日のレスキュー講習の目玉!
水深8mで行われる『意識ない事故者を安全に引き上げる方法』の練習だ。
ブリーフィングを終えると、水底からロープが伸びる水面フロートより潜降を開始!
水深4m・・・5m・・・6m・・・8m
水底に到着すると詩織さんがOKサインを出しながらひとりひとりの状態を確認する。
私は腕を使って詩織さんに向かって大きなOKサインをだした。
その詩織さんの横に腹ばいになりながら事故者を演じているアシスタントの斎藤さんが目に入った。
斎藤さんは『早くレスキューをしてほしい』とジェスチャーをしながらおどけていた。
そんな和やかな雰囲気の中で講習は行われているはずだった。
突然、脳裏にフラッシュバックが起きた。
斎藤さんの顔がタンカの上で血の混じる泡を吹きながら運ばれる事故者と重なったのだ。
あれ....? なんか..空気が吸いづらい? バルブ開け忘れた? もう空気がない?
残圧は? 苦しい! ! 息が....
く、苦しい! 水面に戻りたい! 戻りたい! 苦しい!
上に! 今すぐ上に浮上したい!
詩織さんが異変に気が付いて私を水面へ引き連れ浮上した。
「もう大丈夫だよ。水面だよ、桃ちゃん! 」
「あぁ、あぁぁ.. すいません。すいません。ごめんなさい。なんか急に息苦しくなって.. 残圧はあるのに空気が出づらくなって。変だな」
「そうなの? わかった.. 桃ちゃん、BCDに空気しっかり入れて! レギュをくわえてフロートに捕まって待っていて! 絶対に放さないでね。水中からみんなを呼んですぐ戻るからね」
私たちは一旦陸に戻った。
・・・・・・
・・
「すいません、みなさん。詩織さん、このレギュ、なんか変です! もしかして故障かな....」
「 ..わかった。じゃ、私のレギュレーターと交換しよう。詩織ちゃんは私のレギュを使ったらいいよ。それでもう一回いってみよう」
私は詩織さんのレギュレーターを使い潜降を開始した。
4m・・5m・・6m・・7m
いつもと変わらない潜降。
そして水底に到着して.... なんでなの?
まただ.. また、だんだん空気が渋く、重くなっていく.. ダメだ! 苦し..い。
何かドクドクするのは私の心臓! だめ!! もう、だめ!!
「何か変! 」「何か変!! 」のサインを慌ててだすと、私は水面を目指した!
・・・・・・
・・
「桃ちゃん、今日はここまでにしておこう。しばらくダイビングを休もうね。ほら、大丈夫だよ! 講習は今度またやり直せばいいから。ね? 」
私はなぜか涙が出た。
本当は.. 本当は、心の中でわかっていたんだ....
水の中が怖いって....
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