戦記のSS集

WsdHarumaki

第1話 少女が戻る街

貧民街では、いつもお腹を減らしていた。

「たべものは、もうないから」

母親からそう言われると、家から追い出された。

路上で暮らしていると、仲間ができる。

みな親から捨てられた、子供達だ。

ひもじければ、屋台の食べ物を盗んで飢えをしのいだ。


「子供狩りだ」

月に一回は、捨てられた子供達を捕まえる大人が走りまわった

みな物陰に逃げるが、何名か捕らえられる。

今回は、少女が対象だった。

「施設へ行くぞ」と軍人らしい男は手をつないでくれた。

ひさしぶりの手のぬくもりで、うれしい。


「今日から訓練を始める」

施設で暮らす事になる少女は、モニターがついた椅子に

座らされた。そこで操縦桿を握る。

モニターのぶれる目標を見て

外さないように操縦桿を操作した。

毎日が同じ事の繰り返しだが、ゲームのようで楽しい。


字を覚えて、簡単な計算をして、地図の読み方を理解した

彼女はもう立派な戦士になる。

今回の目標は、陣地や塹壕にある大砲だ。

戦場へ行き、そこで有線誘導式のロケットを操作する。

ロケットの先頭には、カメラがありモニターで確認できる。

有線なので近くで、操縦をする。


「着弾確認」

軍人が成果を報告した。

少女の初陣は成功のようだ。

軍人は、少女を褒めてくれた


「今日は別の任務だ」

少し悲しそうな軍人は彼女の手を握り、大きなロケットに乗せた。

中はいつもの、モニターと操縦桿がある。

軍人は、目標を教えてロケットの扉を閉めた。

少女はいつもの通りに、操縦桿を握る。


軍司令部は、絶望的な戦況に最終兵器を使う事を提案した。

恐ろしい毒ガスで敵を殲滅させる作戦だ。

操縦者は、身寄りの無い子供を使う事にする。


ドンっと大きな衝撃が走ると、空を走るような感覚がある

そうだ夢の中で、空を飛んでいる感じ

「私は、これでどこにでもいける」

開放感で、命令された事を忘れてしまう。

少女は楽しくて仕方が無い

モニターを見ながら、飛び回る。

「私の家はどこにあるのかな」

あの貧民街を見たくなる、操縦桿を首都に向けた。


軍人は、ロケットがくるくる回りながら操縦不能な様子を確認すると

自爆ボタンを押した、しかし無線が届かない。

「最初から無理な計画だ」

諦めた時に、まっすぐ首都に向けて飛んでいくロケット。

見送りながら、戦争が終わると確信をする。

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