我等、はみだしテイカーズ4!~八尺坂より愛を込めて~
えいみー
プロローグ/前回のあらすじ
うだるような暑さは「あんな事」が起きた翌年であろうとも、容赦なく人間に襲いかかる。
汚染され、形を変えられた世界でさえ、自然は崩壊する事はない。
ただ、人間やその他の動物に優しくなくなるだけだ。
2031年7月12日。
都内某所にある、高級カフェテリア。
限られた上流階級の者しか入れない場所に「彼女」がいるのは、彼女がその「限られた人物」であるからに他ならない。
「すいません、いきなり呼び出してしまって!」
「いえいえ、こちらもお仕事ですので」
笑う彼女だが、その底は知れない。
担当編集者である男も、彼女の底無し沼のようや美貌には、どれだけ経っても慣れる事はない。
分類的には十分美女に分類される彼女が、恋愛も結婚もせず、物書きをしている。
聞けば「そんなバカな」と思うだろうが、彼女の美しさを前にすれば、なんとなく察する事は出来る。
これは、人前に出すには危険すぎる。
古くは、大妖怪・九尾の狐や、三国志演技の貂蝉のそれと同じ、人を狂わせる類いの美貌だ。
「こちらが、新作の草稿ですわ」
「はい………ふむ」
天は二物を与えずとはいうが、彼女はそれでいて、作家としての才能まであった。
彼女の作品はどれも面白く、人の心を捉えて放さない。
だからこのご時世に、この若さで豪邸を建てる程に儲けている。
それでも、創作をやめない所を見ると、彼女が金やちやほやされる為に物書きをやっている訳ではない事がよく解る。
「新作は………妖怪物ですか」
そんな彼女が新作として発表しようとしているのは、日本に古来から存在している聖霊………「妖怪」に分類されるそれをテーマにした話。
ジャンルの分類としては、怪奇ホラーだ。
「しかし先生としては珍しいですね、リアリティー重視なのに、妖怪って」
担当が言った通り、彼女は創作物においてリアリティーを重視する傾向にある。
故に、こういった非現実的なファンタジーめいた物の印象は、どちらかというと薄い。
「ふふふ………取材で、ちょっと、ね………」
「ちょっと?」
「見ましたのよ………実物を」
が、彼女からすれば、これもリアリティーのある話だ。
何故なら、彼女は見たからだ。
現代になお生きる、闇の世界の住人達を。
「実物って………」
「ふふふ、どうでしょうね………」
………さて。
彼女は何を見て、知ったのか。
「それでは………お仕事の話をしましょうか………」
そして、これを「はみだしテイカーズ」の物語へと軌道修正する為には、今から一年ほど前の日本へと遡らなければならない。
一年前。
2030年の、うだるように暑い夏の、悪寒に満ちる程奇妙な「八尺坂」へ………。
………………
西暦1999年。
かの、ノストラダムスの予言は当たった。
突如、地球全土を覆った謎のオーロラと、磁気嵐。
それは、地球の衛星軌道上に出現した「穴」………時空の裂け目とでも言える場所から、地球に広がった「
後に「アンゴルモア・ショック」と呼ばれる大異変。
それにより、地球は変貌した。
魔力と共に地球に現れた、「モンスター」と俗称される、異世界を由来とする狂暴な不明生物達。
魔力による汚染により、異世界の環境が再現されてしまった領域「ダンジョン」。
突如現れた恐るべき「敵」により、多くの人々が犠牲になり、人類は危機に立たされた。
だが、もたらされたのは「敵」ばかりではなかった。
それから一年して、いくつかのモンスターのように、魔力を自らの力「魔法」として行使する人間が現れだしたのだ。
それはやがて人類全体に広がり、モンスターに対する対抗策として重宝された。
モンスターへの対抗策が生まれると同時に、様々な事が明らかになってきた。
それは魔力が、ダンジョン発生の媒体になる汚染物質や、魔法という超能力の元という以外に、
使い用によっては石油や原子力をも上回る、新しいエネルギー資源としての側面を持っていた事。
やがて、モンスターの討伐やダンジョンの調査。
ダンジョン内部に発生した、様々な資源の採掘を生業にする人々が現れた。
かつてのファンタジーRPGの勇者達のような活躍を見せる彼等は、いつしか「ダンジョンテイカー」………略して「テイカー」とも呼ばれるようになった。
それに続くように、テイカーの育成の為の機関や、専用の武器や防具を作る会社も生まれた。
やがて、世界の危機はイベントと仕事に変わった。
いくつかの危険度の低いダンジョンは、テイカー入門の為の訓練所や、テイカーを疑似体験する為のベンチャー施設に変わった。
恐れられていたモンスター達も何種類かは捕獲され、動物園や水族館で………厳重な注意の元ではあるが、見る事が出来る。
テイカー達も、トップクラスの者達はロックミュージシャンやトップアスリート並みの人気を博し、称賛を浴びた。
世界がモンスターに、ダンジョンに、テイカー達に熱狂していた。
………こういう物が一番好きそうな、ある国を除いて。
………………
米国のテイカーチームから追放された女、スカーレット・ヘカテリーナ。
日本の社会からのけ者の烙印を押された少年、
そんな二人のはみだし者が結成したテイカーパーティー「はみだしテイカーズ」は、二ヶ月の夏休みを利用し、各地のダンジョンを巡る旅をしていた。
ある時、お金が必要になったスカーレットは、「稲荷市」の競馬場で開催される重賞レース「覇王賞」で一儲けしようと考えていた。
所が、そこには「グレンダ・タンバリン」に率いられた環境保護団体「グリーンガード」も来ており、レースを中止させる為にデモを繰り広げていた。
そんな中スカーレット達は、悲運に散った競走馬「ブーケトス」と、
その元調教師であり現社長の「
そして、覇王賞開催の前日。
グレンダ達はオーストラリア政府から盗み出したマジックアイテム・ネクロマンサーヘッドを使い、稲荷市のあらゆる食肉をゾンビに変え、街をパニックを陥れた。
そして、ブーケトスが自分を死に追いやったナガレに復讐しようとしているとして、ナガレの眼前でブーケトスを甦らせた。
………が、グレンダ達の予想に反し、ブーケトスはナガレを恨んではいなかった。
そこにスカーレット達も駆けつけ、絶体絶命の状況に立たされたグレンダは逆ギレ。
ネクロマンサーヘッドを暴走させ、ジャイアントゾンビを呼び出した。
アズマはニクスバーンを呼び出し、ジャイアントゾンビに立ち向かう。
だが、体内に取り込んだグリーンガード構成員を盾にするジャイアントゾンビを前に、追い詰められてゆく。
その時、ブーケトスがニクスバーンに力を与え、新たな武器「スレイプニールアロー」が誕生。
その一撃により、ジャイアントゾンビは中枢であるネクロマンサーヘッドを破壊され、崩壊。
取り込まれていたグレンダやグリーンガード構成員達も無傷で解き放たれ、逮捕された。
こうして、事件は解決。
覇王賞・夏は無事開催された。
さて、次に彼等に待ち受ける冒険とは………?
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