第34話

034

「そんなんじゃ、お前の夢は一生かけても叶わない」「そんな事ないわ!」「いいや。その醜い顔では、どんなに努力しても報われることはない」ごろうの自身を否定する言葉をキヨラが振り払う。しかし、まるで歌を謡うかのように『殺人マシン ごろう』は口を開いた。「お前は誰にも愛されていない。チヤホヤされるのは、家のおかげだ。お前自身じゃない!」「そんな事ないわ。私を好きだと言ってくれる人はたくさんいる!」「いいや、いない。お前みたいなつまらない人間は、誰かの同情に曝され続けて生きていくしかないんだ」「つまらなくないわ!私は私、それ以上でもそれ以下でもない!」言葉の刃物を仕掛ける『殺人マシン ごろう』に、キヨラは必死に対抗する。しかし、膨れ上がる黒い霧は留まるところを知らない。圧し掛かる圧に、流れる冷や汗は誤魔化せなかった。




035

「お前を見てくれる人間は誰一人いやしない。その隣にいる人間も、お前に縛られて大層不快だろうよ!」「そ、んなこと……っ、!」「家の力でチヤホヤされて嬉しいか? 他人の同情で認められた気になって無様だと思わないのか? 一人じゃ何も出来ない、ノロマでグズな人間がよぉッ!」強い言葉の数々に、黒い霧が一瞬にして膨大に膨れ上がる。その圧力にキヨラがついに膝を折った。ごろうの言葉に発動した黒いモヤが、次々にキヨラに取り憑いていく。ほくそ笑む口元はどこか不気味で、トオルはゾっとした。

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