第30話
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『殺人マシン ごろう』の思惑を知らないまま、小学三年生まですくすく育ったキヨラ達は、いつもよりも陽が落ちて暗くなった校庭をキヨラとトオル、二人で一緒に歩いていた。校門付近で先生の手伝いで遅くまで残っていた二人は、今日も仲良く手を繋いで歩いていた。黄昏時と言われるこの時間は、キヨラの可愛らしい顔を更にしっかりと映し出しており、繋いだ手も合わさってトオルの心臓を跳ね上げる。自覚した恋心は、彼女の意に反して日を追うごとにどんどんと大きくなっていくばかり。最近ではまともに顔すら合わせられない日々が続いていた。
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「ねぇ、今日家に来て泊って行かない? 面白いお話があるの」「あ、え、えっと……」キヨラの言葉に、トオルはどこか歯切れの悪い言葉を返す。そんな彼女に気づいたキヨラが足を止め、振り返った。「どうしたの、トオルちゃん。最近なんか変だよ」「そ、そうかな」「うん。前も、この前も。私の家に来なかったし」「あ、あれは、テスト期間だったから……」「トオルちゃん、いつもちゃんと勉強してるから必要ないでしょ」「そんなことないよ」不貞腐れるキヨラに、トオルは困ったように笑う。まさかあのキヨラちゃんからこんなに言われるだなんて、思ってもいなかった。嬉しい反面、感情が追い付かなくてどこかふわふわとしてしまう。緩みそうになる頬を抑え込んで、トオルは周囲を見渡した。不意に視界に入った人の姿に足を止める。
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