第18話

018

互いに一人っ子だ。姉妹ごっこ、なのかな? と考えた瞬間、頭の中で重々しいショック音が響くのを感じた。思った以上にショックを受けている自分に驚く反面、込み上げる感情の波に鉛筆を持つ手が震えた。──『一緒に居たい』、『離れたくない』、『誰かにその眼差しを向けないで』、『私だけ見て』。……次々に溢れる気持ちに、私は息を飲む。友達に抱くにしては重過ぎる感情は、どう考えても少女漫画の中で書かれるものばかり。──私はきっと、彼女が好きなんだと理解したのは、すぐだった。


自分の中で目覚めた、はじめての恋。それは淡く脆く、清らかさに翻弄される。自分の“感情”が、彼女に受け入れられない事が何よりも怖かった。『キヨラちゃんと離れた方が良いのかな』と悩む反面、『私は素敵なキヨラちゃんを漫画のヒロインにしたいだけで、恋なんてものじゃない』なんて言い訳する。……相容れないアンビバレンスに苛まれた私は、結局どの授業も集中して聞くことが出来なかった。




019

——キヨラちゃんはクラスだけに留まらず、学校中のカリスマ的存在だ。親衛隊の許可なしには近づけない。目を合わせることが出来たらそれだけで羨ましがられるほど。家の事もそうだし、彼女自身の努力が滲み出ている結果でもある。……そんな子が、同じ小学三年生である事も驚きだが、何より自分と近しい人である事に驚愕する。とはいえ、自分のこの目を真に理解してくれているのは、彼女だけである。彼女だけが自分のこの目の弊害を正しく理解し、手を伸ばしてくれるのだ。この短い人生の中で、私はそれを心身共に理解していた。そんな“例外”である私は、よくキヨラちゃんと一緒にいる時に鋭い眼差しで睨まれるのを感じて、身を竦めているわけなのだが。

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