第78話 知らなかったその②

 山本母娘のインパクトが強すぎて。何しに来たんだか忘れかけてしまった。なんかもう帰っていいかなぁ。帰ろうかなぁ。と言う気すらしてくる。


「あの、俺もう帰ります。話は、また今度で…………」


「えぇえぇぇっ! ちょっと、待って!! そんな流れじゃなかったよね? エロゲ展開的におかしいよっ!! ここは美味しく頂いちゃうところじゃないの? 親子丼をシ○ブ漬けで!!」


「あらぁ。私はもう、おばさんよ? 良いのかしら?」


「エロゲじゃないしっ! なんで、親子丼する前提なんだよっ!! というかここ、吉○家だったのかよっ!!」


 さっきから、ツッコミばかりで疲れて来たよ…………………やっぱ帰ろうかなぁ。そう思って、荷物を取って帰ろうとする。


「じゃ、また明日………いや、来週かな?」


「待って待って! 晩御飯だけでもどう? ねっ。ママ!!」


「そうね。晩御飯作るわよぉ。 ――――もちろん親子丼よね?」


 奈月さんが、そういつつ。分かってますよ。と言うウィンクをしてきた。


 それに大人の色気を感じてしまい。クラクラしてくる。と同時に頭痛くなって来た。果たして俺は、無事に家に帰れるんだろうか。ナニかを失ってしまう気がする。


 って言うか、この家のお父さんはどうなってるんだ。俺このままじゃ、親子丼で頂く、間男みたいじゃないか。


「そう言えば、旦那さんはどこに?」


「今日は夜勤よ。帰ってくるのは明日の朝ね」


「そ、そうですか…………じゃ、やっぱり帰ります」


 そういうと、リナが俺の手を掴んで止めて来た。しかもなぜか、奈月さんも俺の手を掴んでくる。


「さっき、お願いしたでしょ? お願いはちゃんと叶えないとダメだよっ♪」


「親子丼食べてくれないと。嫌よ? もう、おナカが親子丼になっちゃったんだから♪」


 確信した。この家はヤバい。何がヤバいって、誘惑がヤバい。


「まぁ、半分は冗談だけれど。ご飯食べて行って欲しいのはホントよ?」


 半分って、どこからどこまでが、冗談なんですかっ!! 俺、気になりますっ!


「それじゃ、作り始めるから。親子丼ってどうやって作るのかしらね? でも、親子丼作った事動画サイトみて勉強しないと。具体的には45分くらいかしら」


 そう言って、優しい笑顔の奈月さん。その表情は、娘に似てとても魅力的で、友達の母親じゃなかったら………と思わなく――――


 ―――――いや! おかしいだろっ! 危ないっ!


「おっけー。45分のご休憩ね」


「えぇ、45分は部屋をノゾきに行かないわ。大丈夫? ちゃんとデキる?」


「ありがとうママ♪ 多分、大丈夫♪」


「どういたしまして♪」


「それじゃ、イコっ♪」


 そう言って、俺の手を繋いで引っ張られて連れて………なんなのこの展開…………もうご飯食べるのは決まってしまった様だし。


 仕方ないので、スマフォを取り出してサオリに連絡をした。


いち:今日は、晩御飯は別で



 遂に? やって来た、リナの部屋は、思ったよりも物が少なく綺麗に片付いていた。要らない物は、ネット経由で売ってしまうと言う話だったから。その影響かもしれない。


 物は少なくて片付いて居てアロマのいい匂いがする。最近流行りのミニマリスト的な部屋に感じる。サオリの部屋とはまた違う、女の娘の部屋って感じがして段々と緊張してきた。


 ただ、部屋の奥に見える。押し入れ。その中には、きっとエロゲが沢山あるんだろうな。確かギャル妹が兄に、オタクだった事を告げるんだっけ。


「それじゃ、飲み物どうする? お水? お茶? それとも、わ・た・し?」


「それじゃ、水をお願い」


「私は? あ、やっぱ先にお風呂? ちょっと行ってくる?」


「水だけでいいって……………ていうか緊張してない?」


「え、うん…………」


 リナは、言動はいつも通りでにも思えるけれど………どこかちぐはぐだ。これから自分の事を話すのに緊張しているのかも知れない。


 そんな事を思いつつ、待っているとリナはお水を持って来てローテブルの向かい側に座った。


「――――はい。お水」


「――ありがとう」


 ゴクゴクゴク


 受け取るとすぐに水を飲み干してしまった。俺も、緊張していたのかもしれない。どうやら、喉が渇いていた様で、体に水分が染み渡るのを感じた。


「それじゃ、そろそろ話そうかな…………聞いてくれるかな?」


「あぁ、もちろん。その為に来たんだから………」


「えっとね。どこから話した方がいいかな?」


「どこから、と言うと。最初から? となると小学校の頃からかな」


「そう、だよね。 ―――いや、改めて話すとなると緊張しちゃうなぁ」


「それなら、隣に来たら? 向かい合ってると話しづらいって言うよ? それに、いつもと違うし」


「あ、ちょっと待って、アルバム出すから。パパの事も話す必要あるし」


 そう言いつつ、リナは棚からアルバムを取り出してきた。いよいよ本題かと思ってたんだが、隣に座ったリナが、俺の足に足を当てて来てたんだけれど、なぜかドキドキしてきた。


 足と足で触れ合うだけでも、こんなに意識してしまうだなんて……知らなかった。

 

つづく

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あとがき


生娘薬漬け親子丼

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