第76話 誘い

「「ママおかえり!!」」


「えっ。なっ、なんの話っ!?」


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 二人に、ママ呼ばわりされて、びっくりしているサオリ。っていうか、さっき言わないで、って言っておいたじゃないか。まぁ、なんの拘束力もないんだけどさ。


「それで、どういう事なのかな? いっくん?」


「なぜ俺に…………」


「いや、だって、二人の視線が」


 そう言われたので、二人をみると確かに視線がこちらに向いていた。女の娘に熱い視線を送られるのは嫌じゃないけれど。求められてるのは、これじゃない―――――こんなんじゃないんだ。


「えーと。そのな? 分かるだろ? からかってんだよ。コイツら」


「アタシ、人をコイツって言うのは感心しないな? ん?」


「えっと、この方々は遊びあそばせられてるんですよ」


「ふぅん?」


 頭に疑問符を浮かべながら、笑顔で俺に近づいて来る彼女。いつもと違って、ゆるふわな髪の毛から漂って来る甘い香りが、なんとも言えない気分にさせてくれる。


(コソコソ)ク「どう思います?」

(コソコソ)リ「キスしちゃいなよ」

(コソコソ)ク「ここ教室だよ?」

(コソコソ)リ「関係ない、行け」


 そこ、何を言ってるんだっ。聞こえてるぞっ。あと、スマフォ構えるなっ。撮るんじゃぁないっ。二人とも他人事だからってめちゃくちゃ楽しそうだなっ。


「えっと………バイトしたいなぁ。って言ったらこうなった。俺は悪く無い」


「ん? バイト? なんで?」


「旅行したいなぁ。って」


「どこよ?」


「………イタリアとか……」


「お金の前にさ。―――英語できたっけ? 無理じゃない? まず、勉強しよう……ね?」


「私、ある程度なら出来るよ〜。英語」


 リナの父親がイギリス人だったっけ。それなら、ある程度出来るって事なのかな。それならお願いしちゃおうかな。って、そうすると勉強するんじゃないか。バイトはいつ出来るんだ………良いケド。


「なんか、それだと結局三人で勉強するんだね。アタシたち」


「そうかも。いいとも〜?」


「うちくる?」


「うん。イくイく♪」


 …………言い方が卑猥に聞こえた。いや、きっと俺の心が汚れてるんだ。そうに違いない、そう思おう………。


「あんたら仲良しでいいねぇ。わたしも、先輩と本気で付き合ってみようかなぁ」


「クミちゃん、そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」


「それは、彼氏持ちの余裕だよぉ」


「そんな、つもりじゃないってばっ」


「嘘つきっ。前は悩んでたくせにっ。女同士の友情は、こうやって死んでくんだぁ」


 そんな事を言いながら伊藤さんは泣き真似を始めてしまった。こういう時、女の娘ってずるいって思う。なんだか守らないとならない様に感じてしまう。


 男がやっても『なんでないてんの? 男なのに?』で済まされるのに…………。


 俺たちがそれぞれ好き勝手に騒いでると、昼休憩が終わってしまった。午後は特に何もなく終わり。俺たちはそれぞれ帰宅する事になった。


 一緒に居たのに空気だった石井君は、サオリとクラス委員の仕事で残るって言う話だった。実際に、アイスクリーム屋で決まっちゃうんだろうか。そうしたら歌わされるのか。


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 今は、リナを自宅に送って行って居る最中だ。そしてずっと昔から気になっていた事をこの機会に聞いてしまおうかと考えている。


「なぁ、ずっと気になってたんだけどさ」


「ん? なに?」


「なんで、昔から俺たちに構ってくるんだ? その普通は…………二人目で良いとかにはならないんじゃないのか?」


「――――それって、お願い?」


「お願い…………かも?」


「どっちなのw」


「じゃぁ、お願い」


「おっけー。それじゃ、私の部屋に来てよっ。そしたら話すから♪」


 彼女が居るのに、他の女の娘の部屋に行くってどうなんだ? 良いとは思えないけれど。 ――――でも、気になる。それに、いつ聞いても同じ様に部屋に誘われてしまう気もする


「ねっ♪ いいでしょ?」


 そう言いつつ、俺の手を取ってくるリナ。その手はいつもの様に柔らかいけれど。少し冷たくなっていて、表情もどこか緊張している様に感じた。口調からは、分からなかったが真剣な話だったらしい。


「わかった。でも、サオリには連絡するよ。変な風に疑われたくないんだ」


「家まで、送ってる時点で疑うもなにもなくない? いまさら?」


「そうだけれど。今は、喧嘩したくないんだよ」


「わかってるって♪ 明日デートだもんね?」


「それもあるけど…………」


「ははぁん? もしかして、その後 ――――シちゃう気なのかな? やっぱ家? それともホテル? あ、私はどっちでもイイよ♡」


「そんな事は聞いてないだろ………っていうか分かっちゃうの? そういう事って」


「分かるよ。ずっと見てたし………それに、いった君。物欲しそうな顔してるもん」


 そう言いつつ、包み込んでくれそうな笑顔をしている彼女をみて、前に抱いた好意が、まだ継続しているんだ。と自覚してしまった。


つづく

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あとがき


部屋にお呼ばれしちゃいました。

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