第11話 居るはずがない

「ナンパとちゃうわ。でも、メッセのID教えてください」


「やっぱナンパじゃん。ウケるんですけどっw」

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 朝から、俺と隣の席のリナは楽しくおしゃべりしてしまった。

IDはちゃんと交換出来たので、俺とリナはボッチではなくなった。

まぁ、交換には手間取ってHRまでに出来ず、休憩時間にも

やり方をにらめっこしてたが。。。


 教えても貰ったID入れてもなんか出てこないし。どうなってんだ?

QR? ふるふる?? なにそれ美味しいの???

家族やサオリとはアプリ入れた時に電話帳から登録されてたから、

メッセだけ交換するやり方がわからん。

二人してやっとの事交換出来たので、達成感を感じてしまった。

メッセのID交換ってこんなに難易度高かったのか・・・・・・。


 そして時刻は、昼休憩になった。

俺はいつもの様に、カバンからコンビニで買い貯めして持ってきている

サラダチキンとりんごを取り出して食べ始めた。

これ安くて、美味いんだよなぁ。ちゃんとタンパク質も取れるし。


 ただ、ちゃんとした食生活かと言うと疑問ではある・・・

以前、サオリにも小言を言われたが・・・

お弁当作るのめんどくさいし、学食行くのもめんどくさい。

めんどくさい上にタンパク質よりもカロリーが多い食べ物ってのは

筋トレにハマってしまった俺には魅力を感じない。


 そこに労力をかけたくない、ってサオリに言ったら

『たまになら、お弁当を作ってきてあげる』って事だった。

 ありがとう。サオリ。


 ただ、ずっと節制を続けるのはキツイから

カロリー気にせず食べるのは夜だけ。と言う事にしている。

たまに食べる、マックのシェイクとかカラオケ店のハニトーが、

めちゃくちゃ美味しく感じるんだよなぁ。


 昨日はサオリが家に泊まっていったから、お弁当は用意されてないので

サオリは俺に声をかけてそのまま学食へ向かった。

なんか、去り際にリナをそして俺の事を睨んでたけど。


 そんなことを考えつつ

サラダチキンを、もそもそ食べてると隣の席のリナから問いかけられた。


「いった君、前から気になってんだけどさ」


「ん? なに?」


「それだけで足りるの? 私の分けてあげようか?」


「え。分けてくれるの?」


 そう言って、俺はリナのお弁当を覗き込んだ。

いろどりがよく、美味しそうなお弁当だ。


「これってリナが作ったのか?」


「いや、ママが作ったよ」


「へぇ。それじゃ卵焼きもらえたら嬉しいな。でも俺、箸ないな」


 卵は、生命の源だ。なんかコレステロールがどうとか言われてるが

生命の源。その塊である卵が体に悪いわけがない。俺は卵の可能性を信じてる。


「じゃぁ、あーんしてあげようか?」


「え、まじで? お願いしますっ」


 そう言って俺は雛鳥の様に待っている。

可愛い女の娘からのあーんを断る男なんているわけがない。

もし、年上のお姉さんからのあーんならなおさら断る必要がない。


「いや、全く迷わないとか思わなかったんだけど………」


 呆れた顔をしながらリナがそう言った。


「えー。嫌なら箸貸して、もう卵焼き食べたい気持ちになってしまったんだ」


 普段、食事を節制しているせいで、

一度食べたいってなったら我慢出来ないんだよ。

そんな事を思いつつ、リナの顔を見つめる。

ちょっと照れた感じなのが可愛いし

さっき、からかわれた分、やり返したくなる。


「そんなに見つめんなって、やりづらいでしょ。今回は箸貸すから使ってよ」


「ありがとう」


 よし、箸を借りれた。卵食べるぞ!

でも、その前に確認する事がある


「箸だけどさ、こっちの使ってない側使ってもいい? それとも持った時に汚れがつく方がきになる方?」


「なんか………手馴れてるねぇ。それも幼馴染ちゃんとの影響?」


「………中学校の頃から言う様になったからなぁ………」


「じゃぁ、とりあえず。今回は反対側でお願い」


「わかった」


 そう言って、俺は卵焼きを食べる。

卵の中にチーズが少し入ってて、その上で旨味を感じる味わいだ。

隠し味にダシかなにか入れてるのかもしれない。

リナのお母さんは料理上手なんだな。

って思える。


「美味しいよ。丁度いい火加減で全体として柔らかく仕上がって居て。その上でだしかなにか入れてて、少し味に深みを作りつつ、冷めてても美味しく感じる様に作られてる気がする。その上でさらに柔らかさを演出するためにチーズが入ってるのがいいね」


「なにそのマジレスw 食レポ? 宝石箱やー、とか語っゃうの?ww」


 つい語ってしまった。


「いや、一時期料理に、はまったんだよ。でも、すぐ飽きたんだ。食べさせる相手がいないんじゃなぁ。サオリが家に来た時は、サオリが作りたがるし」


「なにそれー、目の前の女の娘をほっといて惚気かなぁ?」


 惚気………てるかな。サオリと家で二人でいる時はいいんだ。

ストレスは感じない。


「よかったら他のも食べてよ。面白いコメント期待してる♪」


「え、そんなに思いつかないぞ。ハードル上げてくれるな」


さっきは卵焼き食べたい。っていう気持ちになってたから出ただけだ。

普通に食べたらそんなに語れない。


コメントをひねり出しながら、弁当を食べ終え、その後もリナと談笑していると

昼休憩が終わりそうな時間になって、サオリと陽キャグループが帰って来た。

そしてサオリが、俺たちが楽しそうに話しているのを見てこう言った。


「はぁ………やっぱ浮気じゃん」


つづく

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あとがき


可愛い女の子にあーんされたくない。男子が居る筈がないっ。


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