世界の仕組み
(そう言えばソル、一つ聞きたいことがあるんだがいいか?)
(いいけど、なに?)
少しだけソルの表情が明るくなった気がした俺は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
(この世界に神っているんだろ? 会ったことあるのか?)
(なんだ、そんなこと? もちろんあるわよ)
(……マジか)
思っていたより素直に、それもシンプルな回答が返ってきたことに驚いた。神に口止めされているとか、そういうことすらもないようだ。
(でも、それがどうしたの?)
(いや、実際どんな存在なのかと思ってな。それに、神様ってきっと俺の知り合いなんだよな)
もし実際に神がいるとしたのなら、その神が作ったこの世界に俺やかなを連れてきたのも神なんじゃないか、なんて勝手にそう思っていたりする。もしそうだとしたら、なんとなく納得できる。だって、神様の不思議パワーなら、何でもあり得るのだから。
(それは珍しいわね。でも、あの神の知り合いとかなにも嬉しくないわよ。きっと、何だったら違う可能性もあるんだし聞かれても知りませんって答えたほうがいいわ)
(相当嫌いなんだな、自分を作った親みたいな存在が……)
(実際気持ち悪いのよあいつ。性格がねじ曲がった陰湿な奴だし、礼儀も節度も知りやしない。で? どうしてあいつを知り合いだと思うの?)
本当に、散々な物言いだった。だが、本当にそれだけ嫌われるような人物、いや、神なのだろう。でも、より納得だ。そんな神なら突拍子もなく異世界から誰かを連れてこようと考えてもおかしくなさそうだ。
(俺、実は少し前までの記憶をなくしてるんだけど、その前に起こったことが神じゃなきゃできなそうなことでな。もしかしたら神に記憶を消されてるんじゃないかと思って)
(あいつ、ついに自分で作った世界に干渉するようになったの? もうだめじゃない。空想上にしか存在しないこの世界の三大宗教の神たちや邪神の方がまだましよ)
(……本当に散々言われるな)
というか、三大宗教の神々って実際はいないのか。そしてその口ぶりだと邪神教が信仰する邪神は実際に存在するというのか。どうせならそれも実在はしないでほしかった。こっちの世界に来てから初めて出会った明確な敵対組織っぽいからな。
(ま、私も生まれてからしばらく一緒にいただけでしばらく会ってないし、会いたいとも思わないから何とも言えないけどね。更生してくれていることを祈るわよ)
(七つの大罪の一人にすらそんな風に言われる神、本当にどんな奴なのか気になるな)
(ろくでもないやつってことだけは確かよ。それにしても、あなたもまた数奇な人生送ってるのね。あいつに目を付けられたんじゃ、私たちの出会いも偶然とは言い切れないってことなのかしら)
(……あー、神様の仰せのままにってか。この世界の運命すらも神の想いのままと)
(そゆことよ。ま、何でもいいけど)
ソルに言われて気付いたが、本当に神が存在するのなら俺たちの運命だとかはそいつの采配によって変わるということだ。一度それを気にしだすと、今後の人生なんだか不安だな。
(気にしないのが一番よ。別に、あいつが本当にどうこうするとは思わないわ。放任主義だからね)
(そうなのか? ならいいか……)
神様だって自分で世界作ってそれを全部自分でコントロールするんじゃつまらないよな。
神に直接産み出されたというソルが言うのだから間違いないのだろうし、せめてもの救いだな。
そんなことを考えていると、ソルが椅子を引いて立ち上がった。
(なんだ、帰るのか?)
(ええ、今日は帰らせてもらうわ。また明日遊びましょうとかなちゃんに伝えておいて頂戴)
(わかった。またな)
(……ええ、また)
ソルは一瞬唇を噛んだのち、誤魔化すような笑みでそう言った。何か、まずいことを言っただろうか。
少しだけ重たい雰囲気を纏ったソルは、俺が見送るまでもなく音もなく姿を消した。本当に、よくわからない奴だ。
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