入り浸る
(おま、今日も来たのか……)
(何か悪いの? いいじゃない。私たちの仲でしょ?)
(……悪いとは言わんさ、悪いとは。ちゃんとかなを構ってやってくれよ)
(わかったわよ。お昼はこの前のチャーハンってやつでいいわ)
(……油、あったかな)
基地での留守番を始めてから一週間、毎日のようなもソルは遊びに来ていた。毎回いつの間にか俺たちが借りてる部屋の中にいるのだから恐ろしい。気配も音のせず、気付いたら隣に座っていたなんてこともあった。その度にかなと遊んだり、俺の料理を食べて行ったりしているがこれといった目的があるわけでもなさそうだ。暇だからと友達の家に入り浸る陽キャのような存在だった。なお、実物を見たことはない。
そして、今日は一昨日振舞ったら大好評だったチャーハンをご所望の様子。元々材料がないこの施設なので実はちょっとずつ調達していたりする。どうやってって? キッチンからではなく貯蔵庫からお借りしているのだ。それだけでも引け目を感じるのに、と思いつつも最強の魔獣を敵に回すよりましだよな、と自分に言い訳をしておく。
(全く、お前みたいな魔獣が入り浸ってるって知ったら亜人たちはどう思うのだか)
(そうはいっても亜人国の国王も元魔獣だし特に何も思われないじゃないかしら。まあ、私がいるって知られたら驚かれるとは思うけど)
(そりゃそうだ。俺だって毎日のように来られてるがその度に驚いてるぞ。暇か、ってな)
(暇で悪いかしら。長生きしすぎるとやることもなくなるのよ)
(そういうもんか)
(そういうもんよ)
そういうもんらしい。
(まあいいか。少しかなと遊んでてくれ。すぐに昼にする)
(わかったわ。ありがとね)
(二人前も三人前も変わらんからな)
と言っても、かなとソルの食欲はすごいものだが。
(どうしてこう、俺は強いやつらに好かれるのかな)
小さくため息をついて、俺は料理を作り始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます