リリア
「えっと、それじゃあ俺たちはそろそろ行こうかな。今亜人国に帰るところでな。ルナをあんまり待たせるわけにもいかないし、用事を済ませてまた人間の国に戻らなきゃいけないんだ」
目の前の少女が改めてやばい存在と知った俺は早急にこの場から離れる決意を固めた。
「あ、そう? それなら行きなさい。また会う日を楽しみにしているわ」
「そ、そうだな。今度はルナも連れてくるから」
「それは期待が膨らむわね。まあ急がなくていいわ。私は暇だし」
「おう、じゃあな」(かな、行くぞ)
(ん? わかった)
そして俺はさっさとその場を去った。
(や、やっと着いた……)
(そんなにソルという少女が怖かったか?)
(当然だろ! ルナ以上の化け物だぞ、あいつは。あんなのと万が一戦闘になったら命がいくらあっても足らん)
ソルと別れて二日後、無事リリアの住む木の家に帰ってこれた。
そして、再会を待ちわびていた人がそこにいた。
金髪を揺らしながら、こちらに駆けてきているその人は、俺の主であるリリアだ。エルフ特有の長い耳と青い瞳が彼女の魅力を引き立てているのだろうか。まあ、あとはたわわな胸元だが俺は胸の大きさで女性を評価する人間ではないのでどうでもいいだろう。
俺達の帰りを察知していたのであろうリリアは、俺とかなに駆け寄ってきて笑顔で出迎えてくれた。
「お帰りなさい」
「うん、ただいま」
「え?」
「え? ……あ、そうか」
お帰りと言われたので返事をしたら不思議そうに見つめ返された。なんでだ? と考えてみたが当然で、俺は喋れないと思われているのだ。俺はリリアにこれまでの経緯をざっと説明しがてら、木の家に入れてもらった。リリアが紅茶を用意してくれてからも数時間ほど近況報告をした。
「そうなんだぁ……すごいね司君。精魔人かぁ、私初めて見るかも」
「そんなに珍しい、のですか? リリア、さんも知らないほどに?」
「むぅ、敬語やめてって言ってるじゃん」
「え、っと、その。あんまりなれなくて……気を付けるようにするよ」
「うん、それでいい!」
話してみると、やっぱりリアは可愛らしいというか元気だった。ノリがいいというのだろうか、声音が明るくてこちらまで元気をもらえる。見た目で言えば少女そのものなので違和感はそこまでないが、彼女がエルフであることを考慮すると――いや、これ以上考えるのはやめておこう。
「それにしても、精魔人かぁ。精霊や悪魔、核のみの存在を自在に宿すことができる人間。もちろん宿した相手の制御は大変だけど、宿した相手がリルさんだったらマイナスに働くことはないもんね。ふふっ、最初あった時はあるはずの権利すら与えられていないただの人間だったのに、ずいぶんと強くなったね」
「うん。それもこれも、リリアのおかげだ。あの時奴隷として買ってくれて、色々と装備をくれたりしてくれたから。あと、かなと制約させてくれたからだと思う。ありがとう」
「……ふぁあ! ありがとうだって!」
リリアは少しぽかん、とした表情を浮かべた後弾けるような笑顔を浮かべてそう言った。どうやら俺にありがとうと言われたことが嬉しいらしかった。
「喜んでくれるなら、俺も嬉しいよ。でも、まだまだこれからだし色々なことを教えてもらえると助かる」
「うんうん、私も司君の成長を感じられて嬉しいよ! いくらだって教えてあげるから、これからも頑張ってね!」
「ありがとう」
リリアと喋っているとなぜか黒子の姿頭をよぎった。まあ、テンションが高くて話し上手ってところは似ているかもしれない。俺のために色々やってくれるってところもそうだろうな。
……俺が何かやればいちいち突っかかってきたり、学校行けだとかゲーム捨てるぞだとか親みたいなこと言ってたけど、黒子だって俺のことを思ってこそ言っていたのだろうしもうちょっと素直に言うこと聞いて苦労を減らしてやるべきだったかな。なんて、ちょっと後悔していまう。
「あれ? そう言えばかなちゃんは?」
「え、あれ!? かな、どこ行った!?」
辺りを見渡し、気配察知を使ってみたが近くにいない。さっきまですぐ近くにいたはずだがリリアとの話に夢中になりすぎていなくなったことに気づかなかった。
(か、かな!? 今どこだ?)
(あ、司? 今ユグドラシル。……司がリリアと仲良くしてるから暇つぶししてたの)
(す、すまん……リリアと話が出来たのが楽しくて。その、今度一緒に遊ぶから、許してくれないか?)
(……今)
(え?)
(今すぐ)
声でかなり拗ねているのがわかった。と言っても念話だから感情駄々洩れなだけだと思うけど。
(わ、わかった。じゃあ、リリアも連れて行こう。リリアもかなと一緒に遊びたいだろうし)
(……わかった。今門を開くから待ってて)
(ああ。リリアには説明しておくよ)
(ん)
声音が多少優しくなったので機嫌も直ってきたようだ。よかったよかった。
「えっと、かなちゃん見つかった?」
「ん? ああ、いたよ。精霊空間にいるみたいだよ」
「精霊空間!? かなり高位の精霊を宿しているとは思ったけれど、もう精霊空間も使えるだなんて……。みんなすごいわねぇ、私も頑張らなくちゃ」
「あ、そのことなんだけど、かなが一緒に遊ばないかだって」
「遊ぶ? 私が頑張るのと、何が関係あるの?」
「いや、多分遊ぶって模擬戦とかって意味で。かなとしてはじゃれ合いのつもりなんだろうけど、どうかな?」
「いいの? 行きましょう! 私もかなちゃんと遊びたいわ!」
「よかった。時期にかなが精霊空間に繋がる門を開いてくれるから、開いたら行こう」
「うん!」
リリアは明るい笑みを浮かべてそう言った。
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