無口で初心者な私でもVRMMOはできますか?
若葉 冬雪
第1話 ゲーム初心者がVRMMOを始めます。
そのとき、一人の少女は惰眠を貪っていた。気持ち良さそうに布団に包まり寝ていた。すると、
「瑠花!」
突如、下の階からお母さんの声が聞こえてくる。
少女は、少しうめき声をあげたがベットに包まり続けた。
「瑠花!早く、起きて、下に来なさい!」
少し怒るようなお母さんの声にしぶしぶ少女は布団から這い出した。眠い目をこすり、欠伸をしながらゆっくり立ち上がる。この少女の名前は、瑠花。かなり華奢で小さな女の子だ。
瑠花は寝ぼけて落ちないように注意して階段を降りると、玄関に少女のお母さんである梨花がいた。そのすぐ側には、運送会社から受け取ったばかりであろう大きな段ボールがあった。
「…何それ?」
その段ボールのあまりの大きさに、瑠花は思わず声が出た。
「知らない。あなた宛におじいちゃんから送られてきたのよ。知らないの?」
どうやらこの段ボールは、瑠花宛に田舎に住むおじいちゃんから送られたようだ。しかし、これはかなり珍しいことだった。これまでにも、田舎で育てた野菜などが段ボールで送られてきたことはあった。しかし、そのときはすべてお母さん宛で送られてきていた。なぜ、今回は瑠花宛なのだろう?
お母さんもそのことが気になったのか。瑠花に再度、尋ねてきた。
「おじいちゃんに何か頼んだの?」
「…知らない……」
しかし、瑠花には全くといっていいほど心当たりがなかった。本当に、おじいちゃんから何も聞いていなかった。そもそも、おじいちゃんから瑠花宛てに荷物がきたのだってこれが初めてである。一体、何を送ってきたんだろう?
「…大きい……」
荷物を見ると何が入っているか分からないがずいぶんと大きな段ボールだった。本当に何を送って来たんだろうか。しかし、お母さんでなく瑠花宛というからには何か意味があるのだろう。
慎重にカッターを使い、箱を開けていく。すると、中から最新のVR機が出てきた。このVR機は、ヘルメット型のギアを頭に装着することで使用するタイプのものだ。今人気のゲーム機であり、世間にも普及しているが、かなり高価なものである。
「…なにこれ?……」
しかし、瑠花はこれを知らなかった。
それもそのはず、VR機には年齢制限があり、対象年齢は12歳以上とされている。そのため、この度、晴れて中学生になった瑠花は使用できるようになったばかりである。そのため、VR機を見るのは初めてであった。
とはいえ、テレビのCMや友達との会話で普通なら見聞きする機会があるはずだが、この少女に限ってはそんな普通が当てはまらなかった。
それどころか、そもそもVR機どころか、瑠花は今時珍しくこれまでゲーム機に触れたことがない。あっても、オセロや将棋といったボードゲームくらいである。
「…ん?……」
未知のものにどうして良いか判断できず、しきりに首を傾げていた。
どうしたらいいの?そもそもこれは何?
瑠花がしばらく考えていると、見るに見かねた梨花が携帯を取り出しておじいちゃんに電話し始めた。
「あっ、もしもし、おじいちゃん。今、届いた荷物のことなんだけどね。、、、、、、」
どうやら話しによるとあのゲーム機は、おじいちゃんから私に対する中学の入学祝いだそうだ。ソフトもすでにダウンロードされており、配線さえ繋げばいつでも利用できるそうだ。
これで荷物の中身もわかったことだし、良かった良かった。さて、早く部屋に戻って寝よう。
静かに部屋に戻ろうとする私の肩をお母さんが素早く掴んで止めた。
「こらこら、瑠花待ちなさい。せっかくのおじいちゃんからのお祝いなんだから部屋に持っていきなさい。後でセッティングはして上げるから、せめて一度くらい使ってあげなさい」
梨花の言葉に受けて、瑠花は自分が持つには大きな荷物を見つめた。瑠花は梨花に目で訴えたが、効果はなくしぶしぶ荷物に手をかけた。
「…あれ?…」
荷物は大きさの割に意外と軽かった。これなら、非力な私にも楽に運べる。想像より軽かった荷物に驚きながら、私は部屋に荷物を運んだ。
そのままお母さんも一緒に来て、素早くVR機のセッティングをしてくれた。といってもやることは、個人情報の登録と、VR機の配線を繋ぐくらいである。
それでもお母さんがやってくれて良かった。私がやることになったら作業する気が起きなくて明日まで時間がかかっただろう。
「はい、これで大丈夫だから1度は遊んでおじいちゃんにお礼を言いなさいね」
そう言うと、お母さんは部屋をでていった。部屋に私一人だけが残される。
仕方ない、せっかくの入学祝いでもらった物を1度使わないのは申し訳ない。あまり気が進まないため、瑠花は軽くため息をつくと説明書に目を通した。
先程、お母さんの梨花から教えてもらった手順で何も問題はないようだ。
ヘルメットのようなVR機のギアを頭につけてベットに横になる。そして、音声認識によるゲームのスイッチを入れた。
「…ゲームスタート…」
認識できるかギリギリの小さな声だったが問題なくVR機は起動した。するとだんだん眠くなり、次の瞬間、瑠花の意識はとんだ。
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目を開くと、瑠花は真っ白の空間にただ一人立たされていた。
辺りには何もなく、不安になるほど静かで真っ白な空間だ。
「…なにここ?…」
《ようこそ、幻想の世界へ》
静かな空間に無機質な女性の声が響き渡る。
瑠花が今プレイしているのは【Illusionary world】通称【IW】と呼ばれる。仮想世界である。
《この世界は、剣と魔法のファンタジー世界。これからあなた方は、この世界に降り立ちそれぞれ自由に行動して頂いて構いません。危険な魔物や人との闘争に明け暮れるもよし、まったりと生産を楽しむもよし、世界各地を転々として旅をしてもよし、さらには国を作って頂いても一向に構いません。この広大で自由な世界をどこまでもお楽しみください》
《ただし、注意事項があります。この世界の住民や魔物にはそれぞれ意思が存在します。ゲームだからといって誤った行動をすると取り返しのつかないことになるかもしれません。どうか、そのことを忘れずにプレイしてください》
私は、声の主を探したが見当たらなかった。どこから聞こえるか分からない。なんだか不気味だな。
それにしても、ずいぶん脅してくるね。まぁ、要するに他人に迷惑をかけなければ良いんだよね。普通に行動してれば問題ないでしょう。気にしないことにした。
《アバターの作成へと移ります》
《まず、初めに名前を決めてください》
名前?名前か。名前は「瑠花」っと。これで問題ない。
《VR機に登録している名前と一致しています。個人情報保護のため名前を変更して下さい》
えっ、なんで?名前を聞いてきたから答えたのにダメなの?じゃあ、しょうがない。
カタカナで「ルカ」っと。
《ルカ様ですね。・・・この名前は他の方がすでに使用しています。こちらの例を参考に名前を再入力してください》
うわ〜、面倒くさすぎる。
なんで、同じ名前がダメなんだろ?
別に同じ名前の奴なんか何人いても問題ないでしよ。
仕方ない。例を見ると、名前が同じでも数字や記号、苗字を付けて被らないようにしないといけないようだ。
なんかもう、例のままでいいや。
《ルカ・フローレス様ですね。・・・・承認しました》
《続いて、スキルの選択に移ります。次のリストから好きなスキルを5つ選んでください》
スキルって何?
《スキルとは、ゲーム内で使用できる技術のことです。一部のスキルは、スキルを取得していなくとも現実の技術で再現が可能ですが、スキルを利用することで簡単かつ効率的にすることが可能です。》
スキルの量が多い!どれだけあるの?
何でも良いや。適当に選ぼう。
ルカは、そこまで深く考えず適当にスキルを選んだ。一般的な人は、ここでスキル構成に悩むのが普通なのだが。彼女には関係ない。
《次にアバターの作成を行います。自動サポートをご利用されますか?》
少し疲れてきた。
そんな彼女の気持ちを察したのか。AIは最初から自動サポートによるアバター設定を進めてきた。
なにそれ、でも自動でやってくれるなら別に良いか。それでよろしく。
《では、瑠花様のモデリングデータを元に、アバターを作成します》
すると、現実の私そっくりな姿をしたアバターが映し出される。
《こちらのアバターでよろしいですか?個人情報保護のため、髪や目の色の変更をおすすめします》
髪と目の色かぁ。まぁ、濃い青の髪に綺麗な水色の目で良いや。かわいいし。
《以上でアバターの作成を終了とさせていただきます》
《最後にステータスの開き方についてです。[ステータス]の開き方は、開くことを意識しながら手を上から下に振るだけです。ステータス画面から各種設定やゲームをやめるログアウトをすることができます》
おお。ゲームのやめ方をここで教えてくれるのはありがたいな。ゲームを始める前に、説明書をみてたけど、途中でめんどくさくなって最後まで見る前にゲーム始めちゃったからな。
《また、このゲームにイベントは存在しますが、ストーリーは存在しません。ここから先分からないことは自らから調べなくてはなりません。ゲームシステムに関する質問は[ステータス]にある[ヘルプ]か[お問い合わせ]から確認できます。》
《以上でゲーム説明を終了いたします。ルカ・フローレス様の幸福を心より祈りします。それでは幻想の世界【IW】を存分にお楽しみください》
後書き
いかがでしたでしょうか。
読んで頂きありがとうございました。
プレイヤーネームは本名は避けましょう、というテーマの話です。本名を使うのは、初心者あるあるですよね。
今後、いろいろなあるあるを紹介できたらと思います。
まぁ、彼女が人と関わるのかわかりませんが……
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