第20話  ベアの記憶 4

 どこかのお金持ちの家のダンスフロアで紫色のドレスを着たベアと礼服に身を包んだロベルトが踊っている。ロベルトの動きはかなりぎこちないが、ベアが上手く誘導しているといった感じだろうか。


 先ほどみたベアよりも少し大人びている。どうやら時間が進んだようだ。

 そして曲が終わり、二人が頭を下げて数秒見つめあう。


 ロベルトにとっては当たり前のような行動だったが、ベアにとってはそれはもう、恋をしているように顔の表情筋がずっと緩んでいる。


 動かないベアを気遣ってロベルトが声をかける。


「ベアトリーチェ様大丈夫ですか? 私の顔に何か……あっさっき食べた生クリームが髭についてましたか。これは大変失礼しました」


 ロベルトは慌てて口をふく


「違いますわ。もうロベルト様は……とても可愛いですわ」


 そしてもう一度二人の視線が交差しようとした瞬間、ダンスフロアの扉が激しくあけられた。ダンスフロアには似合わない甲冑を着た兵士が大慌てで入ってきたのだ。


「失礼します! 大変であります! ベアトリーチェ様のご邸宅が現在何者かに襲われているとの情報が入ってきました! 直ちに援軍を向かわせて欲しいとのことです」


 一瞬の沈黙のあと、怒号が飛び交う。


 会場にいたエルザは一瞬で自分のできる範囲の指揮系統で最善ものを選び指示をだしていく。そして、ロベルトたちに声をかける。


「ロベルト、ベア急いでベアの家に向かうわ」


「エルザ様それはダメです。私の家が襲われているってことは次の狙いはエルザ様になります。エルザ様はここでお待ちください。私はエルザ様の親友であるとともに、煉獄の魔法使いです。必ずやエルザ様の敵を打ち破ってきましょう」


「わかったわ。でも、危なかったら絶対に逃げてくるのよ。ベアには私の4騎士とロベルトをつけるわ」


「エルザ様、それはダメです。私の家が襲われているのは誘導の可能性もあるのです。エルザ様を守る4騎士は最後の砦です。私は一人で平気ですから。あの頃のロベルト様に森で守られたころとは違いますわ」


「ダメ……何が起こるかわからないんだから、それなら4騎士の中で腕の立つ2人はここに残すわ。残り2人とロベルトを連れていきなさい。これ以上の問答は不要。一刻を争うわ」


「わかりました。ありがとうございます。必ず生きて戻りますから」

「当り前よロベルト、ベアを頼んだわよ」


「任せてください」


 そのままベアとロベルトたちは馬車に乗り走り出す。いつの間にか騎士と一緒に白い子狐が馬車に乗っていた。


「こら、コンタ。お前は留守番だと言っただろ」

「コン」


 コンタと呼ばれた子狐は顔をそっぽに向けて言うことを聞かないアピールをしていた。


「コンタちゃんも私を守ってくれるの?」

「コンコン!」


 その子は任せろと言わんばかりに頷いている。かなり賢い子のようだ。


「それじゃあお願いしちゃおうかな。コンタちゃんは……ロベルトのサポートをしてあげて。そして絶対に死んじゃダメだからね」


「コーン」

「はぁ、ベアトリーチェ様すまない。コンタ足手まといになったらすぐに見捨てるからな。ベアトリーチェ様を守るのが優先だからな」」


「コン」


 コンタは頭をロベルトにグリグリと押し付け親愛の表現をしている。どうやらロベルトに懐いていて離れたくないらしい。


 だが、走り出してすぐ、エルザがいた屋敷が大爆発をおこした


「何があったの!? ロベルト! エルザの元へ戻るのよ」

 ロベルトは一瞬考える……その顔は苦痛に満ちていた。


「それはできません。エルザ様はあなたを守るようにおっしゃいました。まずはあなたのご家族の安否を確認するのが先です。何より、あそこには4騎士のうち2人に警護の数でいえばこちらの倍以上はいます。私たちが戻るよりも彼らを信じましょう」


「そんな……エルザ……お願い無事でいて……」


 ベアの目から涙がこぼれおちる。ベアを乗せた馬車はそのままベアの家を目指した。


 ベアの家は幸いにも敵を撃退していた。


「お母さん大丈夫!?」

「よく戻ったわね。うちは大丈夫だけど……どうも他でも襲われているようなの。だから、ここから別のところへ今度は応援を送らなければいけないわ」


「任せて! 私も戦えます!」

「えぇ、総力戦になるわ」


 そこでまた場面が変わった。

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俺だけ見える運命の相手【幽霊】が傍でデレるの可愛い。 かなりつ @KanaRitsu

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