第14話 幽霊の友人は可愛かった(外見)

 門をくぐり、改めて家を見ると中世の貴族の家のような家だった。

 これを今の日本で造ろうとしたら、いったいいくらかかるのか、想像もつかない。

 

 窓ガラス1枚、1枚にも細かな細工が施され、その姿は王室の宮殿だと言われても驚かない。


 家の中に入ると玄関のエントランスがあり、その先は広間になっていて、正面に階段がみえる。1階から2階へ吹き抜けとなっており、天井からは豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。


 どこの映画のセットだよ! なんてツッコミを思わずいれたくなる。


 僕が1歩部屋の中に入ると壁についていた蝋燭に光が灯る。

 魔法世界と言うべきか、完全に異世界だ。


 入って正面の壁には誰だかわからない大きな美しい女性の肖像画が飾られている。

 だいたいこの家の主人とかの絵なんだろうけど、どこか物寂し気で、美しさの中に冷たさがある。


 きっと笑ったらもっと美人になるにちがいない。


「ベアちゃん! 遊びにきたよー」


 ゆかの声に反応したかのように、壁にかかっていた肖像画の女性がが動き出す。

 美しい少女の絵は実体を持ち、そして壁の中から抜け出してきた。

 僕は小学校の七不思議、夜な夜な動き出すベートーヴェンの肖像画のことを思い出していた。


 あの頃は、怖くてどうしようもなかったが、今目の前でその現象が起こると、なんとツッコんでいやらわからない。


 どうやら骸骨剣士ではなくて一安心する。

 肖像画からでてきた美少女は、長い銀色の髪の毛に色白の顔、ゆかも肌が白くて可愛いが、彼女も相当可愛い。ワインレッドのような赤いドレスと、手には赤い傘を持っていた。


 小柄な体型に表情の薄く守ってあげたくなるような、そんな魅力があった。


 ただ、目の輝きはなく、どこか死んだ目をして働かさせられている会社員のような暗い輝きがあった。


「ずいぶん久しぶりね。三日ぶり? ゆかが来てくれないものだから、私は心配で心配で毎日泣いて過ごしていわよ」


「へへへっ……数十年ぶりに忙しくて。今日はね、人間の友達ができたから紹介にきたの。こっちがえっと……もっくんです! こちらがベアトリーチェのベアちゃんです」


 ゆかが嬉しそうに俺の方を見ながら紹介してくれた。

 あっいいんだよ。絶対に俺のフルネーム忘れてる感じだけど、別に気にしてないから。


「ゆか、人間なんてダメだよ。こいつら脆弱ですぐに死んでしまうんだから。勝手に守れない約束だけしていなくなる代名詞みないなものよ」


「そんな寂しいこと言わないでよ。もっくんは私と一緒に同棲することになったんだから、仲良くしてください?」


 比較的無表情を貫いていたベアトリーチェの顔が一瞬歪む。

 美しい顔立ちの彼女とは思えない程、鬼のような顔をしている。


「ほう。私がいない間にゆかをたぶらかせたということだな。どんな魔法を使ったんだ? あぁん? その責任は命で支払うってことでいいか? 地獄の番犬ケルベロスよ。主人の敵を殲滅せよ」


 ベアトリーチェの目の前の床に緑色の魔法陣が浮かび上がる。

 そこから現れたのは……。

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