第197話
「没落した
「まるで他人事、あんたの父親も無関係じゃないのに」
「いや、契約を仲介したのみで、船が沈没したのは別の問題だろ? あれでいて商売の筋は通す主義だし、保険の運営側になるリスクの説明もしたはずだ」
迷宮では時間感覚が狂い
雑談時の自己申告で思い出せたルクアス家は数年前、領内の不作や災害による致命的な財政難に襲われて、危険度が高く見返りも大きい航路に挑む大型交易船の保証人を引き受け、
「ん~、なんの話、ダーリン?」
「私も気になります、ジェオ君」
「あぁ、実は……」
地元で一世を
「えっと、確か… 焦げ付いた保険金を王家が船主らへ支払う代わりに領地没収」
「成功前提で無謀な契約を結んだと責められて、爵位も奪われたんですよね?」
「統治基盤の信用に関わるからな、宰相閣下の英断だと聞いている」
「うぐっ、酷い言われよう、誰か味方はいないの!」
不満げに助勢を求めて振り向くが、寡黙なのが格好いいと考える老教授は取り合わず、その
紫藤色髪の少女は深い溜息を零すと、脱力するように肩を落とした。
「人間ってね、追いつめられると視野が
今となっては後の祭り、国王や側近らの不評を買って、彼女の父親が平民落ちした事実は
家族仲自体は悪くなかったようで、歳の離れた弟のことも熟慮した結果、
「手っ取り早く済ませるなら、中央の官職を得る必要があるし、自身を売り込むための経歴も必要か。それ
「……
「むぅ、我々は仕事の延長でやらされているがな」
後ろで筋骨隆々な老教授が面倒そうに
「ふふっ、何かにつけて文句を
「“三つ子の魂百まで” だ、諦めろ」
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