第140話
いまだ起きて階下に来ず、惰眠を貪る幼馴染と人狼娘の
その途端、冷たい冬の風が片頬を
「うぅ~、寒いですね」
「それが自然だから、致し方ない」
とぼとぼ歩く背中を少しの間だけ見
始業前の頃合いではあるものの、再着任となる元庭師が正門付近にいて、小さな花壇の世話に勤しんでいた。
「製紙事業に巻き込んだ経緯もあって俺の言えた義理じゃないが、未練がましいぞ」
「えぇ、坊ちゃんに指摘される筋合いは微塵もありません」
「やはり藪蛇だったな、もう作業場や倉庫の鍵開けは済んだのか?」
「それはジラルドがやってくれました。あいつも鍵束を預かっているので」
さらりと答えた工場長が視線を
「「おはようございます、
「「本年もよろしくお願い致します!!」」
その挨拶に応じていたら、唐突に感慨深げな吐息が漏れ聞こえた。
「農家出身の私が中央行政府の管理職とか、人生は何があるか、分かりませんね」
「結果的に主従の縁は切れたが、今後とも頼らせてもらう」
「いやいや、印刷局長なんですから、いつもの
「まぁ、それでも意識を切り替えないと、公的組織の私物化に繋がる」
言わずもがな、製紙工場の従業員に占めるウェルゼリア領民の比率は高いため、領主家との妙な上下関係が形成されないように
早くも王都で雇用された新参と古参の間に
「あまり趣味じゃなくても、親睦会はやった方が
「ははっ、タダ酒は歓迎ですよ、綺麗処の二人も呼びましょう」
「確実にリィナとフィアの分は経費で落とせない、却下だ」
気軽に言ってくれる元庭師の提案を蹴り、宰相閣下が付けてくれた年間予算から適当な名目で費用を
昨年の最終月を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます