第90話
余分な連れ合いが増えるのを避けて、自ら馬の御者を勤めて入った王都はメドヴェ山脈の南斜面にあり、
「ふぁ、人だらけ、こんなに人間っているんだね」
「そう言えば、リィナって王都に縁はありませんでしたね」
「むぅ、なにそのどや顔、思わず否定したくなるんだけど」
「ふふっ、私は何度か、教会の
“どこぞの田舎娘とは違います” と、澄ました口調で
派閥の
「グラシア紙幣の発行に備えた工場の
一応の自己弁護を済ませて、敷地内へ乗り入れると施工中の品質管理を徹底させるため、単身赴任で送り込んだ元庭師の工場長が俺達を目ざとく見つけ、小走りに駆け寄ってくる。
愚痴を聞くのも面倒だと考え、そのまま家屋の玄関口まで馬を歩かせていくが… 苦労人の従僕は諦めることなく追いかけてきた。
「ぜぇ、はぁ… ぼ、坊ちゃん、良くいらっしゃいました」
「出迎えご苦労、手抜きされないよう工事現場の監視に戻れ」
「いや、いや、ちょっとは話を聞いてください!? もうそろそろ、女房が恋しいというか、何というか、地元に帰りたいんですよ!!」
追い
こちらは
「分かった、ジラルドと交代させよう」
「え゛、本当ですか! いやぁ~、言ってみるものだ!!」
港湾都市の製紙工場で経理を
住居の鍵だと判断して受け取り、二本あるうちの片方に多少の銀貨を添え、荷台を覆う
「合鍵、もう一個造ればいいのよね? お釣は駄賃ということで……」
「王都の物価は高いからな、小銅貨で数枚分くらいしか
「ん~、じゃあ、やっぱり任せる」
「…… それを私が承諾するとでも?」
又も口論という体裁を
その間取りは設計段階の図式と相違なく、寝室にはイルファ郊外の天幕で致した
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