第62話
邸宅の執務室を出た後、まだいると思しきリィナを探せば……
どういう
微笑ましい光景に緊張の糸が途切れ、思わず肩の力が抜けた。
「中庭にいないと思ったら、こんな場所に……」
「ん、もう依頼品のウォード
誇らしげな斥候の娘が言うように卓上の小箱は
「婚約指輪と恋文よ、
「勝手に内容を読んだのか? マナー違反は
「すぐに他人が見るべきじゃないと思って、冒頭だけで自重したわ」
若干、気まずそうに視線を
「すみません、兄様… 浅慮な私が中身を聞いてしまったのです、あぅう~」
「いや、御嬢は悪くない。せがまれて断らなかった側に問題がある」
日頃から可愛がっているうちの妹を擁護しつつ、台所仕事を済ませていた元槍術士のメイドが振り向き、あからさまなジト目で斥候の娘に責任を求めた。
勝手知ったるなんとやら、長年の付き合いから歯に
「分かった、今度から気を付ける」
「私も注意します、
「内密の話をしたい、
「むぅ、なんか横暴ね、作ってくれたクレアに悪いでしょう?」
少なくない意趣返しを声に含ませたリィナが
感染地へ向かう際の護衛に雇うなら、過剰なスキンシップを控えさせる必要はあれども、今は許容の範囲内かと
「普通に美味いな、“
「ふふっ、お店に引けを取らないと思いますよね、兄様」
「簡易なレシピを教えてもらったんだ、あの店主も女子修道院の出身だから」
柔らかく微笑むクレアの努力と研鑽を感じ取り、確かに無粋だったと思い直して、追加の小皿で差し出された焼き菓子を
急がば回れという言葉は正しいようで… この場にいないフィアも
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