第33話
ともあれ、
「…… 素直に
「でもさ、実際はどうなんだ?」
迷宮遺跡へ向かう下準備で某都市の商業区を
どう説明したものかと口元に手を当てて
「例えば、だ… 家畜に由来する軽微な
「それは酪農地域で支持されている仮説であって、まだ断言できないのでは?」
「いや、遥かな過去に解明された確定事項だ」
あくまでも可能性の話だという愛弟子の指摘を払いのけ、我が師は病状を引き起こす、目に見えないほど “微細な存在” が世界に満ちていると
「えっと、
「違う、架空の物質を引き合いに出されてもな……」
素朴な疑問を浮かべたフィアが尋ねるも、さらりと神学的な意味合いを持つ
そんな彼女のジト目に構わず、
思わず半信半疑の気持ちを抱いたところで、何やら前方より喧騒が沸き起こった。
「ん~、誰か店先で揉めてる?」
軽い口調で呟き、よせばいいのに好奇心旺盛な斥候の娘リィナが偵察へ向かう。
致し方ないと諦めて後追いすると、雑貨屋の前で行商の男を激しく
「… っ、謝罪が軽すぎるという言い分は理解できました。手持ち分なので少額ですけど、これで許してくれませんか」
「ふざけるなよ、下郎!」
「お前の誠意をレオニス様に見せろと言っている!!」
怒鳴る同年代の取り巻き二人から一歩引き、睨み付けている公子の砂埃で汚れた姿を見る限り、出合い頭にぶつかって転倒したのだろう。
噂に聞く王立学院初等科の制服らしき物を着込んだ彼らは
「申し訳ありません、何をすれば良いか教えて頂いても?」
「即物的なものに興味はない、言葉を尽くして俺の不愉快さを解消しろ」
衆目が集まり、野次馬の人垣が造られていく状況で、見知らぬ金髪の公子は
かつての
「対応を誤って
「女神様は命の価値を等しいって言うけどさ、貴族と平民で違うからね」
皮肉げに失笑したリィナを見過ごせないのか、眉根を寄せたフィアが教理を説き始めそうな雰囲気を見せたので、面倒だし機先を制させてもらう。
「仮にだ、この地で “領主家の嫡男” である俺が犯罪に巻き込まれ死んだ場合、ウェルゼリア領とヴァレス領の間に深い禍根を残す。極論、状況次第では紛争となって多くの民が
「“未然に災禍を防ぐため、王族や貴族階級は法的に護られているべき” なのは分かっています、地母神派に属する聖職者の末席として納得できないだけです」
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