第20話
再度、屋敷に帰り着いて、食事の準備に取り組んでいたメイドへ傷薬を手渡すと、何やら父が探していた
どうせ半刻も
在室の確認も
「
「いや、輸出品の検分だよ、中東諸国へ向けたものだ」
至極当然ながら胡椒を代表とする調味料や、熱帯果実の類を東側の国々から輸入するには財貨が必要であり、単に買うだけの立場だと早々に金銀が枯渇してしまう。
それは製紙法の発祥地であり、偽造できないような版画紙幣を造れる華国だろうと差異なく、交易では素材自体に価値を持つ貴金属の貨幣を用いるのが一般的だ。
「
「悪くない、見てみろ」
ずずいと差し出された手鏡の表面を眺めて、斬新な構造と着想に驚かされる。
よく見かける
「溶かした
「共和制の半島国家ヴェネタで硝子細工の職人らが製法を確立したらしい。既存品よりも高額になるが質は良いし、交易先の富裕層を相手取るのに適した商材だ」
そう思うだろう? と、父は得意げに同意を求めてくるも、硝子鏡と呼ぶべき
耐熱硝子の生成に関しては容易に想像がつかないため、金属箔を低温定着させていると仮定して、鏡の色合いから裏面塗装に使われたのは
「…… 組み合わせの相性で、すぐに思い付くのは水銀だな。相当な時間を見込んだなら、常温で自然と
「我が息子ながら怪しい奴め… それの
「思い付いた手法を一通り試してみる価値はあります」
無難な言葉で
慣れた手つきでティーポットから、余分に用意させていた陶器のカップへ香草茶を注ぎ入れると、卓上を滑らせるように寄せてくれたので一口だけ頂き、やや乾き気味の喉を
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