いつもどおり

@niwa-tori

第1話 騙し欺き時に真実

ーー拝啓、これをお読みの皆様はいかがお過ごしでしょうか。私は今全力で・・・


「敵さんから逃げてまーーーす!!ぅうわぁーーっぶね!!」


当たりそうな攻撃を間一髪で躱しながら藍蔵はひた走る。なぜなら今捕まってしまえば私の計画はすべて頓挫してしまうからである。何が何でもそれを拠点へ持ち帰りたいところではあるが、


「逃げるんじゃねぇ、この盗人がーーっ!!」


と叫びながら追ってくる。まったく、その叫び声をもう少違う場所で役立させることはできなかったのだろうかと口まで出かかった言葉を息とともに吸い戻す。いつも追われているから気にも留めなかったが彼女はいい加減私以外の者を捕まえるべきではないかと考えてしまうが、まぁ考えてもしょうがないと悟り、私はいつも通り彼女を

撃退することにした。いつもどおり、銃剣を腰から下ろしエネルギーを溜めてそして


「放つ」


私がそう唱えると銃口からエネルギー弾が発射される。ふつうは当たることの無い速度の弾ではあるのだが、


「うばっ?!」


と変な声を上がて地面へ倒れてしまった。追われるたびに考えている気がするが毎回追ってくるのが何であんなへっぽこな奴が追ってくるのだろうか。もしかすると、今の管理組合はそれほどなまでに人材不足なのだろうか?そう思いながら私は彼女を振り切り家路についた。


「今度彼女あったらなんか差し入れでもあげようかな」


そんなことをぼやきながら私はメイズの門を出た。

登山用のリュックに入れたメイズの遺品のことを考えながら、拠点へまっすぐと帰った。それにしても、


「やっぱり外の空気は不味いなー。メイズの空気のほうが3倍はおいしいな。

やっぱり土の空気の方がコンクリートの湿った空気よりいい香りがする。」


地上にあふれるコンクリートのジャングル囲まれたメイズを見ながら

私はそう呟いた。

拠点に帰る途中にチキン南蛮弁当と麦茶を買って帰る。


「帰っても一人なのはやっぱり都合がいいなぁ。」


とため息と一緒に吐いていると拠点の前に見覚えのある影がそこにあった。誰かと言われれば、さっきのメイズで追ってきた彼女である。もちろん、名前は知らないが。

とりあえず玄関のドアを開ける邪魔なのでどいてもらおうと声をかけようとすると、


「見っけたぞ盗人、お前の拠点はここにあるって調査済みだからな。覚悟し—」


と言いかけたところで、


「玄関のドアを開けるのに邪魔だからどいてくれないか?」


と頼むと彼女は


「あ?いいぞー!」


とどいてくれた。私が思うよりなんか残念な子っぽいのでこの子を外に置いておくのは不味いと思い


「ついでに晩御飯も食べていくか?」

と聞くと、


「食べるぞー!」

と返答してきた。どうやらこの子は本気で子供のような危機管理能力らしい。見た目を除けばどうあがいても姉と弟だが、内面だけで言えば父親と無垢な娘のようなものである。


聞きたいこともたくさんあったしこの際いろいろなことを聞いておこうと思い、手洗いうがいの後、自室においてあるノートを取りに行こうとしたのだが、


「そういえば—」

なんだろうと聞いていると、


「夜ごはんって何なんだー?」


と聞いてきやがった。本物のお子様である。体だけ一丁前に育った内面ハッピーセットで喜ぶお子様だった。とりえず適当に返しておいた方がいいと思い


「ごはんとみそ汁とチヂミと刻みキャベツだ」

と言っておいた。

買ってきたチキン南蛮弁当は明日のメイズでの昼飯にしようと思いながらそう言うと彼女は、「わかったー」と二つ返事で返してくれた。そういえばリビングの椅子が二つあった記憶がない。そもそも一人しかいないから椅子が二つもいらないので一人用の丸机に一脚しかなかった気もするが、


「ご飯だろー?はーやーくー!」


椅子はちゃんと二脚あった。一つ心配が消えたと思いながらも人に拠点なのに何様のつもりなのだろうかこの娘は?と思ったが、


「今からご飯は作るから少し待ってろー」


と返事をし炊いてあるご飯は無視して、みそ汁とチヂミと刻みキャベツを作り始め

た。とりあえず聞きたかったことが山ほどあったので聞きたいことを今のうちに聞いていこうと思い、


「そういえば、お前さんの名前は?」

と聞くと


「俺か?俺の名前はハウド、ハウド・エミットだ。エミって呼んでくれよな。アンタの名前は?」

と聞かれたのですかさず


「私の名前は逆太、逆太藍蔵だ。藍蔵でいいぞ。」

と言っておいた。そして聞きたかったこと二つ目を聞こうとすると


「そういえば思い出したぞ、藍蔵を捕まえなくちゃいけないんだった!藍蔵のたくみな策略にかかっちまうところだったぜ。あぶねぇ」

とかのたまい始めた。いよいよこの子の職場の扱いが気になってきたところだがとりあえずここは話をそらすように、


「そんなことより、お前さんはどうやってこの場所を特定したんだ?痕跡一つ残さなかったはずだが?」と聞いた。


実際本当に残した記憶はないので、能力によるものだと高を括っていたのだが


「俺の能力かー?教えてほしいのかー?」

と言ってきたので


「ああ」

と返した。すると


「いいけど、お前の能力も教えろよなー。俺だけが教えたら不公平だろー。」

と言ってきた。よかった、不公平という考え方はあったんだと安心しながら


「分かった。」

と味噌を溶かしながら答えた。


「俺の能力はなー?道が見えるんだー」

何かいきなり危ないことを言い始めたと思って聞いていると


「それでなー、俺が見たいと思ったりほしいと思った場所への

道が見えてくるんだ。」

なるほどなるほどつまり


「つまり今回は私をつ・・・会うために能力を利用してこの拠点の位置を割り出した

のか。」

危ない。あともう少しで、また捕まえる話題に戻ってしまうところだった。


「そうだぞ。さぁ、俺も言ったんだからお前の能力も言えよー」


「分かったよ、言うよ。私の能力は断絶、自分が切り裂きたいと思ったものを物理的もしくは概念的に切断することができる能力だ。」


多分この子には全部言っても大丈夫そうだから全部言ったが


「へーー、がいねんてきに切り裂く?っていうのはよくわからなかったけど、とりあえずいろんなものを切り裂く能力?なんだな?」


「ご理科得いただけたようで何よりだよ」


適当にそう返答してチヂミとみそ汁と刻みキャベツとご飯をエミの前に出した。


「まぁとりあえず、ご飯にしよう。積もる話はこの後にしよう。」


「ああ、腹が減って仕方なかったんだよなー♪」


思ったよりエミが純粋な子で心配に思いながら夜ご飯をいつもよりうるさく食べ始めた。にしても本当に管理組合は本当に何をしているのだろうか?こんな子を私に送り込んでくるあたりは何かあるのかもしれないが。

それにしたってこの子の能力、ものを捜索する上でこれほどまでに強力な能力は見たことがない。能力だけで言うなら切り札レベルの能力だ。なぜ私にこんな子をよこしたのだろうか。私に殺されるかもしれないというリスクを考えなかったのだろうか?まぁ私には組合の人材不足も知ったことではないのでどうでもいいのだが。

そんなこんなで夕飯を終えて少したった時にエミが


「俺、今回捕まえられなかったら首って言われたんだけど、どうしたらいいと思う?」


いきなりこんなことを言われた。ゑ?ちょっと待って、理解が追い付かないんだけど


「なんでそんないきなりそんなことを」


「お前をいつも捕まえようとしていたんだけどさ、いつまでたっても捕まえられないからって、次捕まえられないようなら二度と組合の門をくぐるなって言われたんだ。俺、これからどうしたらいいのかわからなくってさ、どうしようかなー?」


その眼には涙はなく、曇りもなく、ただどこを見つめているかわからない虚ろな目で上のLEDを見つめていた。

正直、私はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。私のせいでエミは組合を首になってしまう。だが私がエミと一緒に組合に行けばエミの首は助かるが、私の今後と命が危ういので行きたくないが、なんかエミ自身ももうあきらめが入っている気がする。ならば私のとるべき行動はただ一つ、


それは、「私の所為でそうなってしまうのなら、私と一緒に来るがいい。エミが捕まえられなかった私自身が、エミがエミ自身に自信を持てるようになるまで、一緒にメイズを探索しよう。」

正直、エミがいればメイズがヌルゲーになるのはあるがそれ以上に彼女に意義を見出すには、メイズで経験を積んでもらった方がエミのために考えたからである。私は今エミに言える最善の意見を言ったつもりだが返答はどうなのだろうか?


返答をするのに数瞬の時間が流れた後、


「・・・いいのか?お前になら迷惑をかけてもいいのか?」


「あぁ、別にいいぞ。お前さんといるのは結構楽しそうだし、どうだ?」


「あぁ!よろしくな!!相棒!!」


そんなこんなで二人でメイズを攻略していく日々が始まった。

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