第11話 翼のアドバイス

そう、この癒し系の翼は、実はとっても心が黒い。毒舌でもあるし。そんな飾らない、ちょっと黒い翼が私にはツボで、私の事をバッサリ切ってアドバイスしてくれるので頼りにしてるのだ。今回のことも、翼ならどう思うかを聞いてみたかった。


社員専用レストランは相変わらずの盛況で、美味しそうなものが並んでいる。私は朝の鬱うつとした気分も忘れて、メニューに目を凝らした。私たちは知り合いに時々挨拶すると、端の方のテーブルに座って早速食べ始めた。



「翼は羨ましいほど好感度高いよね。私には、みんな挙動不審というか、あんまり声かけてくれない…。でも私も翼が大好きだから、みんなの気持ちがよくわかるんだけどね?」


翼はクスリと笑うと、悪そうな顔をして言った。


「私の本当の性格知ってたら、きっとみんな引くわよ。反対に美那は綺麗過ぎて近寄り難いだけじゃないの?こんなに小心者なのにね?ふふふ。それより週末にあった事を話して。何があったの?」



私はかいつまんで昨日あった事を、翼に声を顰めて話した。翼は、時々目を見開いたり、眉を顰めたりしながら聞いていたけれど、私が話し終えると満面の笑みで言った。


「凄いわ。美那が巻き込まれるにしては凄い展開よね?相変わらず従姉妹の美波ちゃんはやらかし系なのね。私はあんな従姉妹とは物質的にも離れた方が良いと思うけど…。まぁ、それは美那の決める事だからね。


その橘…征一?お兄さんの方、日向コーポレーションの課長さんだっけ?いきなり家に押しかけるなんて随分な非常識よね?普通ありえないでしょう?」



私はコスプレ中だとか、キスされたとかは流石に言えなかったので、騒ぎ立てて、連れ出されたことだけ話していた。


「そうは言っても、実際弟さんに会ったら、酷い怪我で意識も朦朧としていて…。ちょっと気持ちわかるっていうか。」


翼は私の返事に呆れた様な顔で聞いてたけれど、ふと悪い顔をして聞いてきた。


「ねぇ、もしかしてその橘って人、イケメンなんでしょ。」


私は翼の顔をまっすぐ見られなくて、目をそらしながら答えた。


「…うん、多分イケメンの部類だと思うわ。体格はいいわね。でもどっちかって言うと圧が強いっていうか、怖い感じよ。」


私はその怖い奴と、キスしたり抱きしめられたりしてしまった事は棚に上げて、翼のアドバイスを求めた。


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