第2話 ミナだけど、ミナじゃない!

私は男の眼差しで自分の格好に気づいた。私はコスプレが趣味なのだ。久しぶりの何もない休日、私は友人と一緒に参加する、次のお披露目イベントで着るためのコスプレの試着とフィッティング調整をしていたのだ。よりにも寄って、今は胸と脚が露出した、身体に張り付く小悪魔キャラの衣装だった。


男は面白そうな顔をすると、素早い動きで私の悪魔の尻尾を掴むとグイっと引っ張った。


「ちょっと!千切れちゃうでしょ⁉︎」


私は慌てて千切られないように、男に身体を寄せた。私は、急に男の体温を感じるほど近づいてしまったことにハッとして、男を見上げると、男はギラつく眼差しで私を憎々しげに見つめてつぶやいた。



「…そうやって、あいつもものにしたのか?クソっ。‥良いだろう、私も君の手練手管に乗ってやろう。」


私の手練手管に乗ってやるとか訳のわからない事を言うと、男は私を抱きしめて抵抗する間も無くキスしてきた。私は見も知らずの怒りっぽい男、何か勘違いした男にいきなりキスされて、びっくりし過ぎて呆然としてしまった。


だけど、男のキスで私はあっという間に訳が分からなくなってしまった。私の唇を柔らかく、でも力強く政略する、男そのものの口づけは巧みで、気づけば口の中に舌を突き入れられて、咥内を柔らかく撫でられていた。


少し感じるミントの爽やかさと、ほんのり感じる甘さはどちらのものかも、もう分からなかった。私は口の中を、息をする暇がないほど堪能されて、苦しくなって男の胸を叩くと、男は微かに赤らんだ顔を離してささやいた。



「…こんなに甘いキスなのに、息の仕方も知らないのか。君は何だか矛盾してる…。」


私はこの男のキスでうっとりしてしまった事を恥じて、男を突き飛ばすとドアの外を指差して怒鳴った。


「出ていって!私は貴方の言うあいつも知らないし、貴方の言うミナでもない!おまけにキスするなんて…!」


男は肩をすくめて太々しい態度を崩さずに言った。


「…君だって楽しんだくせに。分かった、キスしたのは悪かった。私だってこんなにいきなりキスなんて、普段したことがないんだ。…とにかく頼むから病院へ来てくれないか。ここの住所のミナなのは間違いないんだ。…それに、君じゃなければ誰なんだ?」

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