雨郡華
やっぱりあたしは雨女だ。そうに決まっている。今日は大事な定期演奏会なのに、この大雨。まぁもうそんなこと気にしない。
「華ちゃん、今日のソロ、頑張ってね」
楽屋で深呼吸をしていると、後ろから声をかけられた。声の正体はこの吹奏楽団の団長にして、超上手いクラリネットの先輩。年はあたしよりもいくつも上だけど、出てくる音はいつまでも若々しかった。あたしもそんな風になりたい、いつも思っている。
「ありがとうございます!」
あたしは振り返ると、笑って会釈した。団長がグーサインで応える。
今はここ海堂市で音楽の先生をやっている。一度はプロのアーティスト、なんて考えたこともないわけじゃないけど、あたしには多分こっちの方が合っている。
「はーい、それでは一曲目の方スタンバイお願いしまーす」
廊下からスタッフの声が聞こえる。もうそんな時間か。あたしは楽器を持ち上げ、首から下げる。右手で楽器を支えながら左手で楽譜を持った。
入団して初めての定期演奏会。それなのにいきなりソロパートがある。めちゃくちゃ緊張する。失敗したらどうしよう。遥先輩も、心寧も来るらしい。
でも、そんなこと気にしない!
全力で楽しんでやるんだ。
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