第167話 返礼と
使いの兵は、乃美の元へと村上からの手紙を持ち帰る。
「乃美様、ただいま戻りました。こちらが、村上様より預かった手紙にございます」
「うむ、ご苦労じゃ」
乃美は手紙を受け取り、丁寧に開封する。
「『此度の申し出、しかと了承いたした。また出発の日取りなど決まれば、大至急で教えていただきたく候』とな」
乃美は手紙の返事に笑みを浮かべた。
「お主も大義であった。ゆっくり休まれよ」
乃美はそう言って、隆景の元へと向かった。
「隆景様!」
「どうしたのですか、乃美殿」
隆景は乃美の来訪にキョトンとしている。
「来島村上水軍より、手紙の返礼が届きました」
「うむ、聞こう」
隆景は乃美に向かい合う。
「来島村上水軍は此度の参陣を快諾してくださったと、こちらが返事の手紙にございます」
「うむ、拝見しよう」
隆景は手紙を確認する。
「きっと手紙を受け取った時、また唐突だ、と笑っていたんだろうな」
隆景はふふ、と笑っていた。
「いつもこちらが参陣要請する時は唐突ですからな」
乃美もそう言って一緒に笑う。
「では、日程を早めに連絡せねばなりませんね」
隆景は元就へと手紙をしたためる。
攻め込むにしても、毛利軍はどう動くつもりなのか……。
小早川と来島水軍のみで奇襲を行ったとしても、元就ないし隆元が別から攻める必要は少なからずあるだろう、という確認である。
「我々も、戦の用意はしかと進めておかねばいけません」
隆景は手紙をしたためながら言う。
「はい、隆景様」
乃美はそう答え、部屋を後にした。
隆景は手紙を書き終えると、吉田郡山城へと出かける用意を始める。
「お出かけでございますか?」
妻である問田大方が隆景に声をかける。
「ええ、父上の元に。帰りは恐らく明日か明後日となると思います」
「お気をつけてくださいまし」
「ええ、もちろん。行って参ります」
隆景はそう言って、数人の兵と吉田郡山城へと出発した。
「また戦でしょうか……」
問田大方は空を仰いだ。
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