第157話 次の目標
元春も揃ったところで、元就は咳払いをする。
それを合図に、全員が姿勢を正した。
「みな、聞いてほしい。ワシの考えを」
元就の言葉に、シン、と静まり返る。
そして、次の言葉を待つ。
「銀山の奪還がワシらにとって最重要課題とこれまで言っておった。それは今も変わらぬ。ゆえに、どこを攻め、山吹城を奪還するか、ここが重要じゃと考えておる」
隆景はこくりと頷く。
「しかし、山吹城は立地的に難攻不落の城の一つじゃ。そこで、もう一つの城、
温湯城は江の川の支流である会下川と矢谷川に挟まれた山に築かれた山城である。
山頂に2段で構成された主郭、すなわち本丸があり、その周辺から東に向かう尾根が二の丸に相当する曲輪となる。
二の丸は、東端の高所に櫓台を設け、本丸までの間を連続した堀切で遮断しているといった構造になっている。
「もちろん、温湯城も簡単に落ちるとはワシとて考えておらん。恐らく長期戦になろう……」
「一つの城を落とすことは容易ではないですからな……」
隆元も頭を悩ませている。
「そして、今回は隆元には留守居役を頼みたい」
「父上自ら指揮を執られるおつもりですか?」
隆元は驚きつつ言う。
「そうじゃ。元春、隆景、主らはともに出陣をしてもらいたい。良いか?」
「もちろんじゃ、父上!」
「お力になれるかは分かりませんが、ともに参ります」
二人は出陣を快諾した。
「では、隆元」
「ええ、留守居はお任せくだされ。何かあればすぐにお伝えを致しますから」
「頼んだぞ」
悠月と松井はどうしようか、と内心で考える。
大抵は隆元とともに出陣していたからだ。
「お主らも付いて参れ。城の事は隆元に頼めば何とかなるであろう」
「わかりました」
二人も承諾することにした。
むしろ、逆に承諾せざるを得ないともいえる。
変な疑いをかけられたくはなかったからだ。
「出発は明後日じゃ。それぞれ用意しておくようにな」
元就の一言に解散し、元春、隆景は大急ぎで居城へと戻ることとなった。
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