第143話 銀山攻防戦

元就は息子二人の戦ぶりを見つめた。

長男である隆元は、民や配下の兵たちを守ろうと奮戦する。

次男の元春は率先して切り込み隊長を務めようとする。

二人の攻防がかみ合えば、領土の争いも簡単には負け戦とはならないだろう。

元就はそう思っていた。


だが、敵は尼子。

簡単には撃破できるとも、守りきれることもできるとは思っていない。

「銀山と民を守れ」

元就はそう命じた。


隆家隊を退けたこともあって、やはり尼子の方が、勢いが強い。

その時だった。


「出ていけ!」

「村から出ていけ!」

鉱夫たちが石を投げ始めた。

「この殿さまたちが、ワシらを助けてくれたんだ!」

「仲間も助けてくれた!」

「出ていけ!」


鉱夫たちは懸命に毛利軍を援護した。

「退けー!」

これでは敵わぬ、と尼子軍は兵を引いた。

撤退して行った尼子軍を見て、鉱夫たちは歓声を上げる。


「ケガをした者はこっちに集まってくだされ」

「命を落としたものはこちらに……!」

鉱夫たちは懸命に手伝いをしようとする。

「すまんのう」

元就はそう言って感謝する。


「ここもどうなるか、我らも分かりませぬ」

「ですが、あなた様方は我らを命懸けで守ってくださった」

「だからどうか、手助けをさせてくだされ」

鉱夫たちはそう言って頭を下げた。

「うむ。その気持ち、しかと受け取ろう」

元就は鉱夫たちに手伝いを頼んだ。


悠月と松井は村の様子を見に戻って来た。

「あれ? 尼子軍が撤退している……!」

「どういうことだ?」

あまりの展開に、二人は唖然とする。


「鉱夫達が手伝ってくれて、尼子が引いた」

元春が二人に教える。

「そ、そうなんですね」

悠月は苦笑いした。


「……?」

松井は悠月がなぜ苦笑いしたか、理由を知らなかった。

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