第119話 鞍掛山城の戦い

翌朝。

杉軍は思わぬ鬨の声に混乱する。

「ど、どういうことじゃ!?」

「毛利の旗印です!」

「毛利殿……じゃと!?」


杉は驚く。

こちらから降ると手紙を出したはずなのに……。


「杉を討ち取れー!」

勢いよく兵たちが攻め寄せる。


「なぜじゃ、なぜなのですか、毛利殿!」

「お主、間者であっただろう?」

「……その声は!」

声の主は椙杜であった。


「椙杜殿……! お主、謀りおったな!」

「貴様が間者であるという証拠、確かに掴ませていただいたからな」

「間者は貴様ではないのか!?」

「わしは毛利殿とは戦友じゃ。裏切るような真似、するはずがなかろう!」

椙杜は元就と共に、杉の軍勢に斬りかかる。


「致し方なし! 皆の者、城門を閉じよ!」

杉は大急ぎで籠城の準備にかかった。

この時、城内には手勢が総勢2600人。

対して毛利軍は7000人の軍勢である。


「大至急、兵を分けるぞ!」

杉は自分の嫡男である専千代丸せんちよまるを秘密裏に逃がした。

「お主は大内義長殿の兄、大友 義鎮よししげ殿を頼りに逃げるのじゃ」

「父上……、じじ上、どうかご無事で」

わずかな手勢を護衛に付け、専千代丸は九州へと旅立った。


「父上、ともに参りましょう」

杉は父、貞泰とともに、防戦に努める。


それから、翌明け方のことである。

毛利軍が鞍掛城の搦め手より奇襲をかけてきた。


「搦め手より敵襲!」

伝令兵たちは、瞬く間に討たれた。


「みな、参るぞ!」

元就は城内へと進軍を進める。

「……さすがは、元就殿。もはや、これまでか……」

杉親子は果敢に戦ったものの、討たれた。

「杉隆泰、討ち取ったり!」

「杉貞泰、討ち取ったり!」

城内に勝鬨が響く。

毛利軍は城兵1,300人を討ち取り、鞍掛山城を落城させた。

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