第118話 険悪

元就が顔を曇らせた。

その理由は、手紙の応対してきた相手達が、なんと非常に険悪の仲であったからである。

それも、どちらも毛利軍に応じる、と返答してきたのである……。


「鞍掛山城の杉殿、蓮華山城の椙杜殿は仲が悪いんじゃ……」

「それは……、困りましたな……」

兵たちも元就に同情的に言う。

「しかと協力してくれれば、それでいいんじゃがの……」

元就は空を仰ぐ。


鞍掛山城の杉、蓮華山城の椙杜の両名がお互いに毛利へと降ったことを知ったのはすぐの事であった。


「なぜお主が!」

「それはこちらのセリフじゃ!」

睨み合う二人に、彼らに従う兵たちもおろおろとし始めた。


「と、殿、落ち着いてくだされ」

「ああ、なぜこうなったんじゃ!」

双方の兵はとりあえず、お互いに殴り合いにならないよう壁を作って遠ざける。


「困ったことになったもんじゃな……」

それを見ていた元就は小さく肩を落とす。

「なぜそのお二人に声をかけたんですか、父上……」

隆元も困惑しながら突っ込んだ。

「双方とも降るとは考えておらんかったが、椙杜殿ならワシらの力になってくれるという確信は何となくあったんじゃ……。杉殿も恐らくは、と思ったら両名とも来てくれるという話になった上に、うっかり仲の悪さを失念しておったわ……」

「そこを失念されていたんですね」

隆元は苦笑いした。


それから後日のこと。

元就宛に書状が届いた。

「椙杜殿からか……、ふむ……」

元就は手紙を開封した。


「……なるほどのう」

元就は手紙と、手紙と共に送られてきた紙を見る。


「杉殿は間者だ。その証拠を送る、というだけあるのう」

そこには、杉の怪しい行動を鮮明に書き留められていた。

「椙杜殿はワシも信頼に値すると思っておる」

「でしたら、杉殿の事は……」

「決別、といたす! 我らの次の目標は、杉殿の鞍掛山城じゃ!」

元就は翌朝の早朝から鞍掛山城に攻撃命令を出した。

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