第80話 元服

突然の攻撃に、山名氏方は大混乱である。

「陣形を整えよ!」

「助けてくれー!」

もはや統率などで着ない状態である。


「徳寿丸、ようやったな!」

「ええ。さすがです」

「徳寿丸は昔から、策を用いさせるのが上手じゃったからのう」

「そうじゃな、元春」

元就は穏やかに言った。


あっという間に、徳寿丸は小早川軍のみで砦を攻め落としてしまった。

「見事なり!」

大内義隆は徳寿丸の武功を強く称賛した。


「そろそろ、お主も元服の頃合いかのう?」

「元服……?」

徳寿丸はきょとんとしながら聞き返す

「そうですな」

元就も徳寿丸の頭を撫でながら答える。


「ただいまをもち、徳寿丸改め隆景とする!」

「隆景、ですか」

徳寿丸は改めて諱を聞き返す。

ようやく、彼も成人の仲間入りとなるのであった。


陣内で、宴が開かれた。

徳寿丸が小早川隆景と名を改めた祝いの宴である。


「隆景、ええ名をもらったのう」

元就は隆景を褒める。

「ありがとうございます、父上」

「大内殿や兄上の隆、小早川家の景を取って、隆景なんじゃなぁ」

「兄上もいつ元服されたんです?いつの間にか元服されていて驚きました」

「1543年じゃ」

「三年前じゃないですか!」

なお、今は1546年である。


「ほうじゃな。隆元から元の字を受け、元春になったのう」

「そうじゃな」

元春も否定しない。


「悠月、元服ってみんな名前が変わるんだね……」

「俺たちの時代では名前を変えることはないからな」

「興味深いよね」

二人はこそっとそんな会話をした。

「なんにせよ、今日は祝いの席だ」

「うん!」

二人は徳寿丸の成長を喜んだ。

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