第73話 手紙

悠月は一晩かかって返事を考え、手紙を書いた。

アナログの手紙など、いつ以来だろう?

そんな懐かしいような思いもしながら書き上げた。


「え? 長くない? 何メートルあるの?」

くるみは書き上げた手紙を見て困る。

「筆がノッた」

悠月は笑って言った。

「そんな小説みたいに……。確かに久しぶりの手書きの手紙で気分もノッたかもしれないけども!」


元就や隆元も、くるみの声に顔を見せる。

「なんじゃ、手紙か?」

「長いな……」

隆元は内容こそ読まないが、手紙を持って苦笑いする。


だが、隆元は光の加減でちらっと内容が見えてしまった。

だが、あえて何も言わない。


「さてと、飛脚さんに頼んでこないと」

悠月は明るい口調で手紙を出しに行く。


「隆元、どうした?」

「あ、いえ。なんでもありませんよ、父上」

「左様か。じゃが、少々顔色が悪いぞ。早く休むようにな」

「はい」

くるみはその時、何かを察した。


「普段、ラインとか電話とかばっかりだから、こういうのも新鮮で良いな」

悠月はとても上機嫌である。


「いてっ!」

悠月はついうっかり、木の根に足を取られる。

そして、ド派手に転倒した。

「あーあ……、やっちまった……」

苦笑いしながら、吉田郡山城に戻る。

「お帰りなさい、……なんで泥だらけなの?」

「転んだ」

「え?」

「……浮かれてて転んだ」

「そんな、ギャク漫画みたいなことある?」

「あるんだろうな」

くるみと悠月は思わず大笑いした。


そして、数日後。

「あ、悠月から手紙……、って長っ!」

床に落ちた瞬間、バサッ、と大きな音がした。

「何メートルあるんだこれ!?」

松井は苦笑いして、一人静かに手紙を読み始めた。

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