第58話 赤穴城、落城

元就は元々居城が山城の吉田郡山城である。

その為、それとなく作戦は思いついていた。

だが、赤穴城は敷地面積が全体的に狭い。

その為、やはり籠城されるとなれば陽動して敵を引き出し、一網打尽にすべきだと元就は考えていた。


だが、籠城戦となれば大内軍全体の兵站が気になる。

「長期にならなければ些細な事よ」

義隆はそう言った。


だが、元就たちは長期になることを予期した。

陣営を張り、赤名城攻略に取り掛かる。

だが、波状攻撃などしようが、門は固く閉ざされていた。

さすがに、堅城となれば難しい。


「やはり、陽動して出てきていただこうではないか」

義隆は苦り切った顔をしていた。

なにせ、陣営を張りおよそ二か月が経過していたのである。

どうやら、義隆はもう少し早くケリがつくだろう、そう思っていたようだ。


「陽動作戦ならば、我らが。参ろう、隆元」

「はっ! 御伴いたします、父上」

元就は自ら陽動の指揮を執る。


陽動し、誘い出された兵たちを一網打尽にするという元就の当初の作戦が実を結んだ。

かくして、赤名城を落城させることに成功したのだ。


「次は月山富田城か……」

義隆は少し苦い顔をする。

やはり、赤穴城の攻略に時間をかけすぎてしまった、と改めて思ったのである。


「養父上、参りましょうぞ」

春持が義隆に声をかける。

「そうじゃな! みな、参ろうぞ!」

義隆は改めて号令をだした。


だが、雲行きを察する者はいた。

こそこそと何人かの国人衆は顔を見合わせ話している。


「大内の方が優位と思いついて参ったが……」

「どうじゃろうな……、この流れは」

「まあよい、不利と分かれば」

国人衆はやはり、優位と思った方に付くのが性のようである。


元就も義隆も、それについて即座に咎めはしなかった。

やはり戦国の世の流れである。

家の為、領土の為ならば鞍替えしていくのは仕方ない、と割り切ってはいたのである。

現に、大内家も毛利家も長い歴史の中でそうして生きてきた部分はあるのだから。

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