第56話 出陣命令
元就は、大内義隆からの手紙を受け取った。
「……ついに動くべき時となったか」
ぼそりと元就はつぶやく。
元就は家臣たちを招集する。
「大内義隆殿より、伝令が参った」
ざわざわと家臣たちも落ち着かない様子になる。
「我が毛利も出雲の月山富田城へ攻め込むこととなる」
元就ははっきりそう告げた。
他にも、大内に呼応した国人衆も大内軍に合流するようだ。
ただ、もし尼子が勢力を盛り返したら……。
元就はそこを心配していた。
そして、元就たちはもう一つ懸念材料があった。
それは、松井の存在である。
元々彼は、尼子に付き従っていたのである。
「どうするんだ、松井」
「僕は……、今度こそみんなと一緒に戦うよ」
「本当に、毛利に付いていてくれるか?」
悠月は心配そうに言った。
「うん。約束するよ。悠月と一緒に戦いたい」
「わかった」
悠月は少し安堵した。
悠月は隆元たちにも松井を共に行動させてほしいと頼みに行くことにした。
「何かあれば、自分も責任を問われたってかまいません」
「覚悟の上、と言うわけじゃな?」
「はい!」
元就は頷いた。
「では、彼の事はお主に任せよう」
隆元はそう言って、出陣の用意を始める。
大内軍は厳島神社で必勝祈願をしていた。
大内義隆の隣には、若い男が一人付き従っていた。
義隆の養子、大内晴持である。
彼の母は、大内義隆の姉であると言われている。
大内義隆は、顔かたちが美しく文武に秀で和歌や管弦、蹴鞠といった雅な教養にも明るい養子である晴持を寵愛していた。
「養父上、この戦、必ずや物にいたしましょう」
「うむ。期待しておるぞ」
祈祷を終え、再度支度を整える。
大内軍は先行して出雲へと向かった。
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