29 二日目⑩農家の主人達と共に消えた家へ
農家の主人は息子を一人呼ぶと、馬車の荷台に一緒に乗せた。
「管理人さんとこには牛が四頭、それに牛を追うための馬が二頭、常に居ましたよ。旦那様がやってきなさる時には、ちゃんといい馬も引き連れてきなさるので、それはそれで別ですし」
「ああ。こっちでも俺がやってきたしな」
揺られながら、馬丁は大きくうなづく。
「あ、おーい」
「居る」家をまず訪ねる。
一つは今回訪ねた農家に比較的近い、道の南側のみの牧草地を担当する家だった。
「おー、どうした?」
「最近変わりないかあ?」
「変わりなあ…… あーちっと困ったことがあるがなあ」
道まで出てきた「隣」の主人は、ほれ、と道の向こうの草地を示す。
「見づらいかあ? ちょっとその上で立ってみい」
ダグラスは言われるままに立ち上がる。
「隣」の主人の指す草地が酷く焦げ、倒れていた。
「何だおいありゃ、誰か火でも点けたか?」
「いんや、そんなこたない。誰がするかい。けど火事があったって話も聞かないんだよ」
ダグラスはふと、最初の日、食事の時にチェリアが言っていたことを思い出した。
「……そう言えば、館の玄関からも南側に、何か草が倒れて模様になってる様なのが見えたってメイドが言ってたな」
「模様、ああ、そう言えばみょーにまっすぐ倒れてたり、丸かったり、そんなのがあった様な」
「ああいう模様ってのは作れるもんなのか?」
「いや、祭りでもない限りそんな暇なことはせんよ。だいたい、でかいもの描いて、誰が見るって言うんだ?」
確かに。
館の入り口は庭やその向こうの草原に比べれば高さがある。
それでも「何か模様があるな」と思う程度だった、とチェリアは言っていたとダグラスは思い出す。
「何だって? 三軒の家と牛が空っぽだって?」
「そうなんだ。そんなことってあると思うか?」
「やー、想像がつかねえ」
農家の主人達は大きなアクションつきで否定する。
そこでここでももう一人乗せて行くことにした。
そして、次がまずその「居なくなった」農家の一つだった。
「ここにはロッドと家族七人、それに作男が三人居るはずなんだが」
家の前で皆降りる。
最初の農家よりは格段に小さい。
だが牛舎はそれなりの大きさがあった。
「俺等は牛舎を回ってみる」
最初の農家の二人がそう言った。じゃあ俺も、とそこに馬丁が付いて行く。
ダグラスは二軒目の農家の主人と、再び家の中へと足を踏み入れた。
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