24 二日目⑤エメリーのめまい
「どうしたんだ?」
イーデンは急にくたりとかがみ込んだエメリーに近寄る。
「あ、ごめんなさい…… ちょっと頭がくらっと来て」
「ちょっとそっちで休んでろよ。何かチェリアがやってきてくれそうだぜ」
「判った」
そう言ってエメリーは木陰に寄って、その場に座り込む。
正直、どうも今朝方あたりから身体が妙だった。
身体のあちこちがざわついているというか、熱感があるというか。
時々ある月の障りの時の症状とも違う。
それより何より、ふっと意識を失ってしまいそうな睡魔が時々襲ってくる。
と言うか、時々自分は寝ているのではないか、という気もする。
だがどうやら歩いているし、作業もしているらしい。
だいたい朝食の時だってそうだった。
食べている時にふっと時間が飛んでいる様な気が何度もした。
一体どうしたのだろう?
「エメリーさん本当、大丈夫ですか?」
そう、やっぱり時間が飛んでる。
チェリアはいつ来た?
*
その頃、エイブラハムとウィリアムは森の中へと入っていた。
「迷子になってはいけないからな」
そう言って、見える範囲で木々にリボンを結びつつ奥へ入っていく。
振り向けば鮮やかな色のリボンがある。その間隔でゆっくり進んで行く。
森番が居ない、というのはエイブラハムにとってはどうにも解せないことだった。
管理人よりまず、彼等はいるはずなのだ。
相手は自然なのだ。
狩りに必要な動物や鳥が居なくなっては困る。
そのためには常にそれらが居る状態を確保しておかねばならない。
時には泥棒だって入ることもある。対処する者が必要なのだ。
なのに、だ。
今日はやめた方がいいか、とエイブラハムは多少思った。
だがその一方で、何かと奇妙なこの状態を目で見て確かめたい、という気持ちもあった。
「父様!」
それだけ言うと、ウィリアムはそっと指と視線である方向を示した。
あまり大きくない鹿がそこにはいた。
「よし」
エイブラハムは銃を静かに構えた。
――
「結構重いな。ここで解体…… は難しいか」
「父様出来るんですか?」
「一応はな。ただあまり上手くは無い。だが森番も居ないことだしな……」
ともかく大物があっさり取れてしまったので、ひとまずは幕屋の辺りまで戻ろう、と二人して獲物を持ち上げて行くことにした。
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