24 二日目⑤エメリーのめまい

「どうしたんだ?」


 イーデンは急にくたりとかがみ込んだエメリーに近寄る。


「あ、ごめんなさい…… ちょっと頭がくらっと来て」

「ちょっとそっちで休んでろよ。何かチェリアがやってきてくれそうだぜ」

「判った」


 そう言ってエメリーは木陰に寄って、その場に座り込む。

 正直、どうも今朝方あたりから身体が妙だった。

 身体のあちこちがざわついているというか、熱感があるというか。

 時々ある月の障りの時の症状とも違う。

 それより何より、ふっと意識を失ってしまいそうな睡魔が時々襲ってくる。

 と言うか、時々自分は寝ているのではないか、という気もする。

 だがどうやら歩いているし、作業もしているらしい。 

 だいたい朝食の時だってそうだった。

 食べている時にふっと時間が飛んでいる様な気が何度もした。

 一体どうしたのだろう?


「エメリーさん本当、大丈夫ですか?」


 そう、やっぱり時間が飛んでる。

 チェリアはいつ来た?



 その頃、エイブラハムとウィリアムは森の中へと入っていた。


「迷子になってはいけないからな」


 そう言って、見える範囲で木々にリボンを結びつつ奥へ入っていく。

 振り向けば鮮やかな色のリボンがある。その間隔でゆっくり進んで行く。

 森番が居ない、というのはエイブラハムにとってはどうにも解せないことだった。

 管理人よりまず、彼等はいるはずなのだ。

 相手は自然なのだ。

 狩りに必要な動物や鳥が居なくなっては困る。

 そのためには常にそれらが居る状態を確保しておかねばならない。

 時には泥棒だって入ることもある。対処する者が必要なのだ。

 なのに、だ。

 今日はやめた方がいいか、とエイブラハムは多少思った。

 だがその一方で、何かと奇妙なこの状態を目で見て確かめたい、という気持ちもあった。


「父様!」


 それだけ言うと、ウィリアムはそっと指と視線である方向を示した。

 あまり大きくない鹿がそこにはいた。


「よし」


 エイブラハムは銃を静かに構えた。


 ――


「結構重いな。ここで解体…… は難しいか」

「父様出来るんですか?」

「一応はな。ただあまり上手くは無い。だが森番も居ないことだしな……」


 ともかく大物があっさり取れてしまったので、ひとまずは幕屋の辺りまで戻ろう、と二人して獲物を持ち上げて行くことにした。

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