22 二日目③使用人の朝食
「お、まだジャムあるじゃねえか」
「昨日あれから沢山作りましたから」
ガードルードはそう言って、昨日より大きな瓶に詰めたジャムを使用人の食卓に置く。
昼は揃って食べるが、朝と晩は銘々仕事の合間を縫う。
「昨日はまだ食べられなかったからなあ」
イーデンはそう言って、パンにたっぷりジャムをつけた。
「お前等もう済んだの?」
キッチンの二人に彼は尋ねる。
「済んだわ」
「済みました」
「何だいずいぶん大人しいじゃないか」
「そうですか?」
「そうかしら」
ヘッティとマーシャのキッチン組は常に元気で騒がしい、フランシアも混じれば姦しい、と彼は認識していた。
どうも調子が狂う、と思いながら薄く切ったパンにどかどかとジャムやチーズを乗せていた。
「うん、こりゃ美味いわ。お前本当に要らんの?」
「だから俺は甘いものは駄目だって言ってるだろうに」
ダグラスはジャガイモのごろごろとしたスープを口にしながら答える。
「勿体ねえの」
「放っとけ。それで今日はお前が旦那様達に着いて行くんでいいんだな?」
「ああまあ。つかお前行きたそうだったろうに」
「農家とのことがあるんだよ」
「あー」
そう言えば貯蔵庫に牛乳の缶があったな、とイーデンは思う。
「無くちゃ困るよなあ」
「茶がなあ」
そうしているうちに、他の使用人も合流してきた。
「おや、今日はあるんですね。では私も」
「私はマーマレードの方が好きですので……」
ミセス・セイムスはそう言ってジャムを断る。
「牛乳が来たそうだね。今日はクリームを作るのかね?」
「ええ」
ガードルードは短く答えた。
執事として彼は長いが、同じくらい長い彼女がこんなに静かに自分に対して答えるのは珍しい、とガードは思う。
「ガードルード、何処か身体の調子でも?」
「大丈夫ですよ」
「それならいいが」
メイド達は朝の一仕事を終えた、とばかりに朝食に食らいつく。
「スープこれしかないの?」
「うわ、もうじゃがいもが無い……」
「ダグラスさん取りすぎですよ!」
「ああすまんすまん」
そう言いつつ、そうだな、これが普通だよな、とダグラスは思う。
厨房ではひたすら皮を剝いていたりんごを煮ているのだろう、良い香りが漂ってくる。
「なあ、それ酸っぱいりんごか?」
ダグラスは厨房の三人に尋ねる。
「甘いのもありますよ」
「黄色いのが甘いです」
黄色だな、と彼はうなづく。後で馬丁に幾つか持っていってやろうと思った。
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