第5話 初恋
「あなたは、私の昔を愛しているだけ。今の私は愛してないのよ!」と叫んで初恋の人は去って行った。結婚式の一か月前に。唐突に。
小学校の入学式で彼女に一目ぼれした。
真夏のある日、麦わら帽子にノースリーブのワンピース、片手に沢山の本を胸元に抱えて遠くから近づいてくる彼女の日焼けした顔が脳裏に焼き付いた。
猫を抱いて微笑んでいる彼女。店番していて買い物に行くと、はにかみながら商品を渡してくれた彼女。ブルーの水着で川の淵に大胆に飛び込む彼女。みんな脳裏に焼き付いた。
大人になって身近になった彼女に、どういう訳かいつも様々に些細なチェックを入れてたらしい。しかし、それは些細なことだからほとんど覚えていなかった。
当時は‟青天の霹靂”な出来事と思っていたけど、歳を重ねたらそれは自分の‟ノー天気な霹靂”だったのだと気がついた。
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