異世界に召喚されたしSNS作っちゃいます!~可能性のカギを投ずるもの~
ドレイン
第1章 俺が召喚された理由
第1話 オワコン化。
「今日の動画はここまで。次回の動画でお会いしましょう。アディオス!!」
右手で敬礼しながらカメラに向けて少し身を乗り出し、分かりやすい言葉で締める。
動画投稿グループ「さいたまズ」の締めの挨拶だ。
さいたまズ・・・埼玉生まれ埼玉育ちの仲間で始めたからさいたまズ。
動画投稿を始める時に何となく決めた「アディオス」という挨拶だが、この締めで8年間の活動し2000本以上の動画を投稿した。
「投稿し続けた」ところに上手く時代の流れが合わさり、登録者は100万人を超えた。
「なぁマッチいつまでこんなこと続けるつもりなんだ?」
撮影後の打ち合わせでメンバーの1人が俺と目も合わせず吐き捨てた。
マッチは俺の活動名だ。
名前が町田蓮斗だからマッチという、ありきたりなあだ名だ。
「唐突に……。こんなことってどういう意味だ?」
ホワイトボードにネタを書き出していた手が止まる。
「分かってんだろ?」
「……わかっているからこそ毎回、こうやって打ち合わせをして、打開策をみんなで考えているんだろ。」
「打合せしてやったことが何一つ成功してないじゃないか。」
さいたまズは100万人越えの登録者がいる。
しかし、そこにもう価値はなく、動画の平均再生回数は1万回程度になっていた。
そう――オワコン。
俺たちが投稿し続けたことが時代に合い、結果が実ったように、時代は常に動き続けている。
テレビより動画サイトを見て育った目の肥えた若い世代が入ってきたりと、年々やるべきレベルは上がり続けた。
昔から投稿してた者たちでこの流れについて行けるのは一部の本物だけ。
現状、俺たちは本物になれていない。
そう……なれていないだけだ。
まだいけるはずだ。
そう、まだ・・・。
「なぁマッチ……やめるとしたら……今しかないだろう。」
……はい?
今……やめるって言ったか?
新しい案を出してくれるのかと思ったが、解散の話をすんの?
どういうことだ……確かに人気は下がってきているがやめるなんて話になる理由が分からない。
100万登録まで行くのは"普通"では無理なはずだ。
だからこそ、俺達にはまだ何か残されているはずだ。
もっと上に行こうぜ!って今までずっと全員で話してきたじゃないか。
全員で……あれ……全員でだよな。
最後にこいつらと腹割って話したのいつだっけ……。
「それに、もう……お前についていくのしんどいんだよ。」
「はぁ?"ついていく"ってなんだよ!俺たちは仲間として同列に一緒に頑張ってきたじゃないか!」
こいつはさいたまズの解決が難しい人気低迷が理由でやめたいと言っているわけでなく、いつの間にか俺との間にできた溝のほうが問題だったらしい。
背中にいやな汗が流れる。
さいたまズの人気が落ちてきたここ1、2年、俺が勝手に1人で盛り上がって、勝手にまだいけると思っていたのか。
何かあったらすぐに相談してくれとも言っていたはずだ。
今まで、こいつらは俺をどんな風に見ていたんだ?
「俺……就職しようと思ってんだよね。大学時代の資格が生かせる仕事を見つけたんだよ。」
「なるほど。自分は準備が整ったから、この話持ち出して、お前らに分からせてやるよ的なポジションで楽しんでるわけだ。」
「マッチてめぇ、性格ひん曲がりすぎだろ!! 大体、リーダーのてめぇが……」
「こんな時にだけリーダーって言ってくんなよ!」
「やめろよ!」
他の仲間に抑えられる形で殴り合いの手前で止まった。
「俺も少し考えさせてくれ。」
「俺も……」
今回の件が好機だと思ったのか他の奴らも流れに乗じてきた。
仲間たちが急に遠くの方に立っているように見えた。
待ってくれ……考え直してくれ……と言いたいが、こいつらの表情を見たら言えなくなってしまった。
「……わかった好きにしろ。結論出たら教えてくれ。」
結局ぶっきらぼうに言い放ってしまった。
後味悪く今日の集まりは解散となった。
家に帰り動画を編集し布団に入る。
今日のことを思い出し怒りが再燃する。
「ふざけるな……どれだけの時間をかけてきたと思ってるんだ!」
俺しかいない部屋で叫んでしまった。
そう、諦められるわけがない。
諦めるには時間をかけすぎているし、成功を見てしまっている。
今日の話からしたらほぼ解散確定だろ。
俺はいつ間違えた?
どこで仲間を置いてきぼりにするような態度をとっていた?
本当に仲間たちのことを理解していたのか?
くそ……分からねえ。
分からないって大問題だろ。
仲間たちのことを一切理解しようとせず、俺のわがままで、仲間たちの人生をめちゃくちゃにしかけていたんだ。
布団に入ったが寝れるわけがない。
台所から酒を取り出し、浴びるように飲んだ。
元から酒好きだったが、最近はかなりの量を飲むようになった。
原因はストレスだろうが、酒は一時でもストレスを忘れさせてくれるからやめられない。
「はははー!!まあ明日になったらあいつらも目を覚ますだろー。あいつらなんだかんだ良いやつだからなぁー。」
陽気な独り言を話すほどベロベロになった。
いつものことだ。
俺はそのままソファーに横になり、泥のように眠った。
次の日、目が覚めると知らないベットの上で寝ていた。
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