第2話
––––翌日
徹は学校へ行くなり、隣の教室へと向かい麗奈を呼ぶ。
「どうした、朝早くから何かあったのか道化君?」
麗奈は会うなり勝手に人を道化呼ばわりして来た。
「何で僕が道化なのさ」
「ん……お前、面白いから」
(この女子は……どうも好きになれないな……)
徹は心の中で呟く。
「で……何の話だ?」
「母の再婚の話だけど、あれって……つまりは……」
「私のパパだ」
その一言に徹は何か重たい物を担がされた気がした。
「これからはお前と私は姉弟になるんだ、良かったな」
「何で君と姉弟になるんだよ」
「親が再婚すれば、一緒に生活する事になるだろう、そうすれば自然とお前と私は義理の姉弟になる」
「それ以上に、どうして知っていたのに何も言わなかったんだよ」
「いや……もう既に知っているのかと思っていたんだ……、昨日の下校時にも確認したんだ。お前だけ何も知らなかったんだな。で……他に何か聞きたい事は?」
「もう……良い、何か疲れた」
「そっか、まあ今度の日曜日が楽しみだな」
(こっちは最悪だよ、日曜日から何処か遠くへ旅に出掛けたい気分だ)
その日、徹は一日机の上で顔を俯かせて沈み込んでいた。
「よお徹、今日は随分と落ち込んでいるのだな」
「もお…最悪だよ、日曜日が来ないと嬉しい……」
「何かあたのか?」
「ちょっとね」
その時だった、クラスの女子が嬉しそうに教室に入って来た。
「ねえ、聞いて聞いて、隣のクラスの竜ヶ崎さん、今度親が再婚するんだって」
「ええ…あの子の親が再婚なの!」
「なんか凄いわね~」
「再婚した相手同士に、それぞれ子供が居た場合、その子達同士でも結婚が可能だってね…血縁関係が無いから」
「それ知っている、以前テレビに出てたわ」
「ロマンチックね〜」
それを聞いてた徹が顔を上げて女子達の話を聞いていた。彼の近くに居た男子生徒が徹に話し掛ける。
「おい徹……聞いたか例の転校生の親が再婚だってよ、もし……再婚した相手の子供に男が居たら……お前達三角関係になるぞ」
「なんで僕とあの女が交際してる事を前提に話すんだ。まだアイツとは一緒に帰っても居ないし。まともに話をしても居ないんだぞ」
「え……だって、もうかなり仲が良いって噂だけど?」
「昨日知り合ったばかりで、随分噂が膨張してるよな…」
少し呆れた声で徹は答える。
その日……昼の休憩時間、クラスの大半がグランドや体育館で遊んでいる中、徹1人ボオッと教室の窓から空を見上げていた。
「オイ」
「ウワッ!」
ドテッ
突然声を掛けられて、徹は思わず椅子から転げ落ちてしまった。
「イテテ……何だよ急に」
逆さまから見上げると麗奈の顔が見えた。
「いきなり現れるなよ」
「教室に入る前に、挨拶はしたけどな」
「ふ……ん」
徹は自分の隣に来た麗奈を真下から見て、チラッと彼女のスカートの中を覗く。
「白か……」
それを聞いた麗奈はハッとスカートの裾を押さえ、徹を軽く蹴飛ばし少し後ろに下がる。
「何か話しがあるのじゃあ無かったの」
「屋上に行く時間はあるか?そこで少し話しをしたいんだけど……」
「分かった」
徹は起き上がり、席から離れて麗奈の側へと向かおうとするが…彼女は数歩程離れて歩く。
スカートの下を覗かれた事に対して、麗奈は徹を意識し始めた…と考えた。
(つまり…恥ずかしい事をすれば、嫌がるのか…)
と、徹は考えた。
「お前……私の下着が見たいのなら、そう言えば……いつでも見せてやるぞ。いきなりは少し慌ててしまう」
麗奈の言葉に徹は少しコケてしまった。
「は……恥ずかしくは無いの?」
「何故恥ずかしがる理由がある?皆、衣服や下着を着ているだろう?」
「そ……そうだけど……」
むしろ麗奈の感性に徹は戸惑いを感じた。言っている事は理論的には間違いは無いが……もう少し違う言い方もあるのでは……と、徹は思った。
2人は屋上へと出た。屋上からグランドで遊ぶ生徒や、校庭内を走り回る生徒達の姿が見えた。
「で…話って何?」
「お前は母親とはずっと2人だったのか…?」
「そうだね。僕が生まれた年…父親はタンクローリーの運転手をしてたけど事故で亡くなったんだ…僕の名付けも母が付けた見たい。少し前まで祖父母も居たけど…どちらも亡くなってしまって…ここ何年かはずっと母は働きっぱなしだったんだ」
「そうなのか…大変だったな」
麗奈は顔を俯かせて答える。
「君の場合はどうなの?」
「私のママは、他の男性と不倫してしまい…今は実家で一緒に生活している。たまにパパに内緒でママと会ったりするよ」
「君の方も少し複雑なんだね」
「仕方ないね、生まれて来た以上…血縁関係は付いて来るからな、こればかりは避けられ無い。まあ……これからはお互い仲良くして行こう」
「そうだね、宜しく竜ヶ崎さん」
その言葉に麗奈は少し顔をしかめる。
「私達の家族になれば…お前も竜ヶ崎になるんだぞ」
「あ……そうだっけ、え……と何て言えば良い」
「別に好きに呼べば良い」
麗奈は腕を組んで視線を逸らす。
「せめて……こう呼んでも良い呼び方とかは?」
「そうだね、じゃあ……ご主人様とか、お姉様とか、麗奈様はどうだ?」
(全て『様』付きなんだな)
「じゃあ麗奈って呼ばせて貰うね」
「まあ……別に良いけど、私はお前を下僕と呼ぶね」
「何故に?」
少し呆れた表情で徹は言う。
「考えて見ろ、再婚して一番存在価値の無いのが……お前のポジションだから」
そう言われて再婚した構図を想像した徹は、確かに自分の立ち位置があまり必要性の無さそうな場所にあると感じた。
「それと……徹」
次に麗奈は名前で呼び、徹はドキッとした。
彼女は徹の顔に間近まで迫る。
「え、な……なに?」
彼女の顔が徹の顔に当たる寸前まで来た時だった、休憩終了の予鈴が鳴り響く。
「予鈴だ、また今度機会があったら話すよ。取り敢えず教室に戻ろう」
「ちょ、ちょっと今、何を言いかけたの?」
麗奈は駆け足で教室へと戻ってしまい、結局何を言い掛けたのか不明のままだった。
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