第31話
坐禅を1時間もの間組んでしまい、学校へ行く時間が迫ってきていた。僕はシャワーに入ろうと脱衣所に行って服を脱いでいると、梨々花が現れる。
「あれ、梨々花ちゃん?」
「お兄ちゃん。さっきはごめんなさい」
「何が?」
「ううん、謝りたかっただけ。気にしないで」
「う、うん」
明らかに落ち込んでいる姿の梨々花に何があったのか気になりつつも、ササッとシャワーを浴びてしまおうと風呂場に入った時だった。僕が坐禅を組んでいる間に湯船にお湯を貯めたのか、茉莉姉さんが入っていた。
数秒の間、茉莉姉さんと僕はジーッと見つめ合い黙り、そしてハッと気づいた時に僕は謝って風呂場から出た。
「ごめんなさい!」
僕が恐れていた事態が起きてしまった。そう、ラッキースケベならぬ、信用ガタ落ち変態野郎になってしまった。
服を着直して、自室に戻り制服を取って心を落ち着かせようとまた坐禅組み、鼻で息を吸い、口からだすシャトルラン方式でやり、10回を終えた時パッと目を開けると、午前7時にまでなっていた。
僕は手に持っていた制服に着替えて、学校に行くまで20分の間自室で忘れ物がないか、やり忘れている課題がないか確認しつつ、茉莉姉さんと顔を合わせないように、ゆっくりと家を出ようとすると後ろから梨々花が現れて言った。
「行くの?」
「うん。出よーかな」
「行ってらっしゃい」
「うん。行ってくるね」
梨々花と挨拶を交し、僕は家を出ると眩い日差しが眼に突き刺さる。
「うわっ眩し……」
そうボソッと呟きながら、ゆっくりと学校へ向かうと、数十分後坂上と合流する。
「おはよー」
「おう。龍介〜!」
「坂上元気だね〜」
「俺はいつでも元気だ!」
ニコニコといい笑顔を見せる坂上に、僕は元気をもらった。昔から坂上のこの笑顔に救われてきている。坂上は一生大事にしないといけないと神様に言われてるような気もしていた。
そんなふうに1人で考えていると、学校の校門を通り過ぎてしまっていた。
「おい龍介〜?」
「ん?」
「どこ行くんだよ」
「あっ考え事してた〜」
早足で校門の方へ戻り、校内に坂上と一緒に入っていくと数メートル先に冴香の後ろ姿を視認した。あの件があっただけに、今日会うのは嫌だなと感じつつ、同じクラスという不幸にも必ず会わないといけないことにガッカリしながら、坂上と別れて教室に行くと、冴香と誰かが言い争っていた。
僕はそれを止めるために大声で「おはよ冴香ちゃん!」というと言い争っていた男は走りながら教室から出て行った。僕の横を通り過ぎる男は見たことがあった。
中里だった。
僕は冴香のところへ向かうと、冴香は涙目になりながら僕を見ずにそっぽを向いた。
「冴香ちゃんどうしたの?」
「なんでもない」
「ん。そっか」
深堀する場面でも無いため、僕は冴香から話し始めてくれないかなと期待を込めながら、ゆっくり今日使う授業道具を机の中に仕舞いながら動いていると、冴香は背中をとんとんと叩いて僕を呼んだ。
「ん?」
「中里が私に付き合わなきゃ龍介がどうなっても知らないって言ってきて、でも付き合いたくなくて」
「中学生らしからぬこと言うんだな。教師に言っても頼りにならなさそうだし、僕が向かえば冴香にも被害いきそうだしどうしようか」
「どうすればいいかな……」
「そうだ。坂上と付き合いなよ。坂上強いし、坂上のお兄ちゃんも確か警察官だったし」
「……龍介くん」
「ん?」
冴香はうるうるとした目で僕を見ながら言った。
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