室生犀星「子守歌」

ゆきが降ると 子守歌が聴こえる

これは永い間のわたしのならわしだ

窓から戸口から

空から

子もりうたがきこえる。

だがわたしは子もりうたを聞いたことがない

母というものを子供のときにしらないわたしに

そういう唄の記憶があろうとは思えない。

だが不思議に

雪のふる日は聴える

どこできいたこともない唄がきこえる。

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