第14話「パンナを捜せ!」
「さあて、行くか」
翌日。
俺は城下町までやってくると中央公園へ向かう。サキとの待ち合わせ場所は中央公園の白銀の騎士龍像が待ち合わせスポットとしては有名らしい。真っ白い鎧を着ている白龍が大剣を地面に突き立てているのが特徴的な銅像だ。俺はそこでサキが来るのを待つことにする。
「おう、兄ちゃん。兄ちゃん、件の勇者さまってのはあんたのことかい?」
「ん? そうだけど。あんたは?」
「鍛冶師で武器屋を営んでいるブレイスだ。あんたの噂は聞いてるぜ」
俺が騎士龍像の近くに立って青空を眺めていると屈強そうな──ヒトっぽさは一ミリもないドラゴン男が近付いてきた。その男は俺を知っているらしくやたら気さくに話しかけてきた。
「武器屋か。結構広まっているかな、その噂は」
「ああ、もちろんだ。我が聖龍国にニンゲンは勇者さま、あんただけだからな」
「そう、なのか……?」
ふと周囲に目をやるとたしかにヒトの姿をしたドラゴンたちばかりだ。竜耳や尻尾が愛らしい。
「ああ、だからあんたには期待してるんだ。頼むぜ勇者さま」
「お、おう……それよりブレイスさんはパンナって知ってるか?」
「ブレイスでいいぜ? 堅苦しいのは苦手なんだ。パンナ? パン屋の子か?」
「そう、そのパンナだ。ところでその子が悩んでるって話は聞いたことあるか?」
「花屋の息子のハドがいなくなってから落ち込んでいるとは耳にしたが」
あんまり期待されても困るけど――にしてもやっぱりパンナはハドのことで落ち込んでるのか。
「他には何かないか?」
「他か? そういえばさっきパンナを見かけたがどこか心ここに在らずといった感じだった」
「心ここに在らず……?」
「ああ、声を掛けても気づいていないようでな。そういえばハドが行方不明になる前もそんな感じだったなぁ」
嫌な予感がする。もしも今がハドと同じ状況だったなら俺たちは既にパンナを護衛するどころか出会うことすらできないんじゃないか?
「悪い! 用事ができた!」
「あ、おい! 勇者さま!」
俺は居ても立っても居られなくなってブレイスに断りを入れてリースのパン屋目指して向かって走る。もしかしたらもう連れ去られてしまったのか?
「クレルおばさん! リースのパン屋はどこだ⁉︎」
「え? あっちだよ?」
「ありがとう! あとリンゴ美味かった!」
八百屋の前に通りがかるとおばさんドラゴンのクレルにリースのパン屋の場所を聞いてこの間、貰った果物の礼を言ってリースのパン屋へ走る。まだ昼過ぎだ。こんな時間に龍攫いなんてするとは思えないが。
「あら? 勇者さまどうしたの?」
「パンナは⁉︎」
「え? 散歩行くって言ってたけど……」
「どの辺りに行ったかわかるか?」
それぁら俺は店内にいたリースに妹の行方を聞いた。その辺で散歩しているかもという話だったがわからない。今はなんとかパンナの無事を祈るしかない。
「な! 邪竜、なのか⁉︎」
「ち! 聖龍の勇者か。お前らそれでいい急げ!」
「行かせない!
「おっと勇者さま、行かせな──」
どこにいるのか捜した。西門の路地裏を通ったときだった黒いツノと黒いトゲトゲとした禍々しい尻尾は聖龍族にはない特徴だ。聖龍族はツノも尻尾も白く透き通ったどこか神々しい印象を受けるだけに真逆だ。龍人に擬態した邪竜族の男たちは幼龍を大袋に入れているのが見えて叫んだ。
「ぐぎゃ⁉︎ はええ!!」
「くっ! 急げ急げ! 決して捕まるなよ!」
「逃すか!」
「いいや! ここは俺らと遊んでもらうぜ」
守護勇者形態に変化して数人の邪竜を蹴り上げ、切り捨てて次々と大袋に入れられていく幼龍を助けようとするが邪竜に囲まれてしまう。
「お兄ちゃ……っ! 助けてっ!」
「パンナ!」
「ちっ! 幻術が不十分だったか連れて行け!」
「くっ……離せ! 邪魔だ!」
邪竜兵たちに邪魔されて幼龍たちが攫われていく。パンナたち幼龍たちが入れられた大袋を持って運び飛び去っていく六人ほどの邪竜の背中を俺は見ていることしかできないのか?
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