第7話 事実関係の確認
お父様と私、騎士団長のノルベール様と大臣のマルシャル様の4人が集まって席に座る。早く終わってほしいと思いながら、私も一緒に彼らの話を聞いた。
「会場に入る前に、警備していた騎士が止めるべきでした。ヘルベルト王子が王族の特権を行使して、ハースト伯爵家の令嬢も一緒に連れて入ったそうですが。拒否するべきでしたね。まさか、あんな事になるなんて予想していなかったと。我々騎士団に警備を任せて頂いたのに、あのような人物の侵入を許してしまい本当に申し訳ない」
本当に心苦しいという表情で、改めて頭を下げて謝るノルベール様。昨夜の夜会は多くの貴族達が参加してくれたので、王国の騎士団も駆り出されて警備をしていた。王子が一緒に連れて入ってしまったので、私は仕方ないと思う。王族の命令を騎士が拒否することは、難しいでしょう。
それに、ユウコを引き止めて、王子だけ会場にの中に入れたとしても、婚約破棄を私に告げていただろう。昨夜の結果は、それほど変わっていなかったと思う。
私がヘルベルト王子に婚約を破棄される、という結末は。
それでも責任を感じて、わざわざ騎士団長自らが謝りに来てくれた。その行動は、とても立派だと思う。
「実は、ヘルベルト王子とユウコ嬢との関係を、我々は把握しておりませんでした」
そう切り出したのは、大臣のマルシャル様。
「あの令嬢は、いつの間にか王子に接近していました。我々の知らぬ間に信頼関係を築いていたようです。そして昨夜の夜会で、2人の関係が発覚したのです」
それまでは他の人達にもバレずに、2人は付き合っていたということ。そんな事、あり得るのでしょうか。とても親密で、恋人のようだったけれど。
「他国の諜報員かもしれないと疑ったのですが、その可能性は低いと考えています」
ハニートラップ、というやつね。王族と気軽に接触できるほど親しくなり、王国の機密情報を奪われていたら大変だった。だけど、マルシャル様はその可能性が低いと考えているらしい。
「彼女は少し前、ハースト伯爵家が正式な手続きを踏んで引き取った、令嬢でした。ユウコ嬢を産んだ母親も調べました。どうやら、伯爵家で働いていた元使用人で……っと、今はこれ以上の説明をする必要はありませんね」
調査した結果をもう一度確認するように、顎に手を当てて考え込むようにしながら語ったマルシャル様。その途中で、私の顔をチラッと見てから語るのを止めた。
私が聞くべき話じゃない、と思ったのね。しかし、一晩でそこまでの情報を調べるなんてスゴイわ。もっと詳しい情報を握っているようだし。
「とにかく、彼女の身元は把握しています。ただ、身元が分かっていても婚約破棄に至った理由が、どうにも理解不能で」
昨晩、婚約破棄を告げて帰ってきたヘルベルト王子に事情聴取を行ったという。
なぜ、勝手に婚約を破棄したのか。どうして、コルネリア嬢の誕生日を祝う夜会で告げたのか。その辺りの話を聞いたけれど、意味が分からないという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます